平成26年度 大学院連合農学研究科入学式
平成26年度大学院連合農学研究科入学式の式辞です。
平成26年4月11日
東京農工大学長 松永 是
東京農工大学連合農学研究科に入学された皆さん、おめでとうございます。教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。また、今まで支えてこられたご家族はじめ関係各位の方々にも謹んでお慶び申し上げます。今後も一歩一歩成長していく彼らを温かく見守って下さるようお願い致します。
本年度の新入生は、生物生産科学専攻11名、応用生命科学専攻5名、環境資源共生科学専攻13名、農業環境工学専攻7名、農林共生社会科学専攻4名の合計40名で、この中には世界4ヵ国からの留学生11名が含まれています。この40名が、それぞれの未来へ向かって切磋琢磨する心強い仲間となります。研究科修了後も研究や仕事を通じて生涯の付き合いとなる人もいるでしょう。お互いに助けあい励ましあって、良い関係を築いていただきたいと願っています。
この連合農学研究科への進学を選んだ皆さんの多くは、既にある程度明確に自分の目標を定めていて、その実現のために努力する意欲に溢れてこの場にいることと思います。ここで今一度その夢や目標を心に強く描いて下さい。そして同時にもう一つ、科学者の使命というものもしっかりと意識していただきたい。現在我々の生きる地球が置かれている状況は決して健全で安泰なものではありません。人類の進化と科学技術や経済の発展に伴って起きてきた環境、資源、災害、健康など多くの問題が複雑に作用しあって、人類や地球全体の存続を加速度的に危うくしています。そのベクトルを変え問題を解決していくために必要なのがイノベーションであり、イノベーションの推進力となることが我々科学技術に携わる者の使命なのです。特に農学分野は、環境・資源・食糧のいずれの側面から見ても人類の健康的な存続に最も直接的に係わる学問分野と言えます。皆さんの研究が持続発展可能な循環型社会を構築しより良い未来を創ることにつながるのです。そのことを自覚した上で、これから過ごすこの研究科が一体どういう所なのか、まずはしっかりと認識していただきたいと思います。
皆さんが入学するこの連合農学研究科は、茨城大学及び宇都宮大学と大学という枠組みを超えて連携し、各々の研究の特性を活かすと同時に補いつつ、国際色豊かに更に洗練されたより有用な最前線の農学研究へと発展させるために創設されたもので、地球規模の視点から持続発展可能な循環型社会を創造する牽引力となり人類の共存と福祉にグローバルに貢献する人材を育成するのに最適な、様々な特色をもったカリキュラムとなっています。この連合農学研究科で学ぶからには、ぜひ皆さんにはこうした特色を有効に活用して、多角的に検討する柔軟な思考や何事にも前向きに挑戦する姿勢をしっかりと身に付けていただきたいと思います。それらは必ず皆さんの一生の宝となるはずです。
しかしながら、研究科という、より高度で専門的な科学技術研究の道には今までの学生生活とは比べものにならないほど厳しく辛い困難や障壁が数多く存在するのも事実です。努力が報われない日々を、挫折・不安・焦燥など様々な感情に耐えながら、それでも実験を繰り返し、知恵を絞り、取り組み続けなくてはなりません。実はそれが科学者の日常なのです。我々もまた研究推進のために日々産みの苦しみを味わっています。そんな時に思い出してほしいのが、吉田松陰の『一日一字を記さば一年にして三百六十字を得、一夜一時を怠らば百歳の間三万六千時を失う。』という言葉です。とにかく日々精進なのです。失敗しても諦めて投げ出したくなっても、この言葉を思い出してとにかく一歩一歩進んで下さい。全く前進していないように感じても、今皆さんの胸に宿っている夢と使命感を暗夜の灯として高く掲げて足を動かし続ければ、いつか必ずその目標に到達することができ、何ものにも替えがたい充実感と無上の喜びを感じることができます。こうして一つの困難を乗り越えたらまた次の目標へ、そしてゆくゆくはグローバルな課題解決に中心的役割を果たし、人類が自然環境と共存しながら他者への思いやりを持って美しく豊かに発展していくことのできる明るい未来の構築に寄与する、真に質の高い科学者として活躍していただきたいと思います。
最後にもうひとつ、あたり前のようですがとても大切なことを申し添えます。学術研究の道は、時に精神的にも身体的にも厳しいものになります。健康な心と体がなくては続けることができません。特に海外から来られた方々は、慣れない土地でいろいろと不安なことも多いかと思います。健康に十分留意して、実り多い大学生活を送ってください。本学もさらに力強く皆さんのバックアップができるよう、あらゆる面で常に最大限の努力を続けてまいります。本日連合農学研究科へ入学される皆さんが今日の気持ちを忘れずそれぞれの夢に向かって大きく成長されることを願い、また皆さんが本学の一員となることにあらためて歓迎の気持ちをお伝えして、式辞とさせていただきます。