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式辞・告辞

平成23年度 東京農工大学に入学された皆さんに


平成23年度 東京農工大学に入学された皆さんに


平成23年度 東京農工大学に入学された皆さんに

 東京農工大学に入学された皆さん、ようこそ東京農工大学にいらっしゃいました。東日本大震災の影響で入学式が中止になったのは、大変残念なことです。地震で亡くなられた方々には心よりお悔み申し上げます。また、被害にあわれた方には心よりお見舞い申し上げます。

 本年度の新入生は、学部は、農学部332名、工学部658名の合計990名です。大学院は、工学府、農学府、生物システム応用科学府、連合農学研究科で新入生をお迎えし、開設2年目となる生物システム応用科学府内設置された早稲田大学との連携による共同先進健康科学専攻もあわせると、修士(博士前期・専門職学位)課程658名、博士(博士後期)課程125名となります。学部、大学院全体を併せた新入生の総計は1,773名で、この中には、アジア、アフリカ、アメリカ、ヨーロッパ各地からの留学生83名が含まれております。この1,773名の皆さんに、東京農工大学の若く瑞々しい力として、のびのびと成長しご活躍いただくことが、我々教職員の最大の喜びとなります。皆さんは今、将来への夢や新しい生活での未知の事物や人物に出会う不安や期待に満ち、または既に明確な目標を持っていて、その実現のために本学での大学生活を送ろうと意欲に燃えていることでしょう。これからの東京農工大学での勉学や大学生活にどのような心構えで臨むかは、皆さんの将来を決定付けるといっても過言ではありません。どうぞ心してかかって下さい。

 学部に入学された皆さん、皆さんにはまず、大学での教育は高等学校までの教育と大きく異なることを認識していただきたいと思います。高等学校までは、教員が教えてくれる知識――先人たちの知――を学生が吸収し、理解できればよいという一方向の教育が多かったのですが、大学では、学生が主体となり、自主的に考え、知を積み重ね、応用し、更に新たな知を生み出すことが求められます。大学とは学問の場です。学問という言葉には、『問う』という文字が入ります。かのアインシュタインもこう言っています。
『過去から学び、今日のために生き、未来に希望を持ちなさい。重要なのは、問いかけるということをやめないことである。(Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is not stop questioning.)』
何かを思いついたら、それに対して「なぜこの問題は起こるのだろう。」と疑問をもち、「どうしたら解決できるだろう。」と考え続けていくことが重要なのです。こうした疑問や思いつきは物事に違和感や問題意識を持たなければ生じません。そしてそれらを正しく認識し理解するには、基盤となる知識が必要です。学部に入学した皆さんは、まず、その一般的、専門的知識を、授業や実験を通して、幅広く身に付けていただきたいと思います。そしてもちろん、社会の一員として羽ばたいていくための人間力を付けるのも、この4年間です。学生生活の中では、「意味がない」と思われるようなことがあるかもしれません。せっかくチャレンジしても、失敗するかもしれません。しかし、今の若いあなた方の考える範囲で意味がなくても、数年後、数十年とのあなた方には必要な経験かもしれない。というよりむしろ、あなた方自身がそこに意味をつけることができるのです。いつか、すべてが線となり、意味を持ってつながる日が来ます。ぜひ、何事も敬遠せず、自主的に、積極的に、学生生活を過ごしてください。

 大学院へ入学される皆さん、皆さんはそういった『学問』の姿勢はすでに理解しているはずですね。そこで次に重要になってくるのは、より専門的な研究者としていかに成長するか、です。現在、地球は様々な問題を抱えています。環境、エネルギー、食糧問題など地球上の生物の存続にかかわる課題です。先ほども申し上げましたが、先日の東日本大震災にしても、その復興のため、また今後地球上のどこかで起こりうる災害を予防するため、または被害を最小限にするため、私達科学者の果たす役割は大きいと信じています。皆さんには、本学の基本理念である、『世界の平和と社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献する』人材となるべく、国際的な視点を持ち、『全く新たな価値観の創造』つまり『夢作り』を目指していただきたいと思っています。そのためには、今まで培ってきた知識を、より深く、より広い専門知識にしていかなくてはなりません。『専門』という言葉では、局所集中のように聞こえるかもしれませんが、いろいろな事象が複雑に絡み合っている現在は、様々な角度からものを考えられるよう、幅広い知識が必要なのです。そして、その専門知識を社会に役立てるために欠かせないのが、コミュニケーション能力です。自分の個性や主張を表現しつつ、価値観の違う他者とも協力、協調し、円滑に物事を進めていく、これができなければ、国内でも国際的にも研究を広げ、社会に貢献することができません。コミュニケーションによって、人や社会と研究とをつなぐことができなければ、研究は本来の意味を失ってしまいます。本学は、世界88の大学と学術交流協定を結んでおり、また海外拠点を設置して海外の有力大学や企業との連携を進め、海外から優れた留学生や研究者を受け入れ、こちらからも派遣するなど、積極的に国際交流に努めており、グローバルに活躍する研究者を育てる体制を作っています。また、本学はもうすぐ大学創基140年になる長い歴史と伝統ある大学ですが、産業の基幹である農学と工学、及びその融合分野において、特に実践的なところで実績があると評価されてきました。早くから産学連携の重要性に注目し、力を入れてきたため、教員一人あたりの共同研究数や金額は、常に日本のベスト5を維持しています。これは、企業が本学の研究を高く評価し、その成果を企業化に活用しようという現れでもあります。また、全ての大学の教員が競って獲得に全力を挙げている競争的資金に、文部科学省科学研究費補助金というものがあります。これを獲得するということは、その教員の研究力が高く評価されたということを示すのですが、教員一人当たりの獲得金額で言うと、本学は常に日本の大学の中で10位前後に入っています。国際交流も積極的で、社会との関わりも深く、高い研究力を認められた本学の特色を有効に活用し、グローバルな問題解決に中心的役割を果たし、循環型社会、持続発展可能な社会の構築に向けて大きく寄与する、質の高い研究者、技術者になっていいただきたいと思います。

 最後にもうひとつ、当たり前のようですが、とても大切なことがあります。研究は、時に精神的にも身体的にも厳しいものになります。健全な心と体がなくては、学問の道も続けることができません。特に、地方や海外から来られた方々は、慣れない地でいろいろと不安なこともあるかと思います。健康に十分留意して、実り多い大学生活を送ってください。もちろん我々も、まだまだ現状で満足しているわけではありません。さらに発展し、さらに力強く皆さんのバックアップができるよう、常に最大限の努力を続けていきます。本日ここに集まった皆さんが、今日の気持ちを忘れず、明日を担う社会人として大きく成長されんことを願い、また、皆さんが本学の一員となることにあらためて歓迎の気持ちをお伝えして、入学される方へのメッセージとしたいと思います。

2011年4月7日