行列式―多重線形性
<定義>
任意の行列式について以下のことが成り立つ
(1)ある列を\(k\)倍すると行列式も\(k\)倍となる.
\(\scriptsize{\begin{vmatrix} ka_{11} & a_{12} & a_{13} \\ ka_{21} & a_{22} & a_{23} \\ ka_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}
= k\begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}}\)
(2)ある列の各成分を各々の和として分割する.
\(\scriptsize{\begin{vmatrix} a_{11} & a_{12}+b_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22}+b_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32}+b_{32} & a_{33} \end{vmatrix}}\)
\(\scriptsize{= \begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}
+ \begin{vmatrix} a_{11} & b_{12} & a_{13} \\ a_{21} & b_{22} & a_{23} \\ a_{31} & b_{32} & a_{33} \end{vmatrix}}\)
(3)2つの列を入替すると行列式は\(-1\)倍となる.
\(\scriptsize{\begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}
= -\begin{vmatrix} a_{12} & a_{11} & a_{13} \\ a_{22} & a_{21} & a_{23} \\ a_{32} & a_{31} & a_{33} \end{vmatrix}}\)
(4)2つ以上の列が等しければ行列式の値は0.
\(\scriptsize{\begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} & a_{22} \\ a_{31} & a_{32} & a_{32} \end{vmatrix}=0 }\)
(5)ある列を定数倍して他の列に加えても
行列式の値は変わらない.
\(\scriptsize{\begin{vmatrix} a_{11} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}
= \begin{vmatrix} a_{11}+ka_{13} & a_{12} & a_{13} \\ a_{21}+ka_{23} & a_{22} & a_{23} \\ a_{31}+ka_{33} & a_{32} & a_{33} \end{vmatrix}}\)
(1)について
平行六面体の一つのベクトル(上図では赤色のベクトル)
のみ\(2\)倍すると,青・緑ベクトルを底面積とみたとき
高さが\(2\)倍されるだけなので,上図のように
となる.
(2)について
上図の2つの黒色のベクトルを足したベクトルは,
始点と終点が赤色のベクトルと一致しており,
同じベクトルであると言える.
つまり,上図のように
を行っても,
図形の体積は変わらない.
したがって,行列の列成分を分割した,
各々の行列式の値は元の行列式の値と等しい.
(3)について
平行六面体の二つのベクトル(赤色と青色のベクトル)
を入れ替えると,上図のように
する.
したがって,行列式(体積)の符号が反転する.
(4)について
平行六面体の二つのベクトル(赤色と青色のベクトル)
が同じであれば,上図のように図形が潰れてしまい,
体積は0,つまり行列式の値が0となる.
(5)について
平行六面体の赤色のベクトルに緑色のベクトルを
足すと,上図のように
する.
このとき,青色と緑色のベクトルからなる面を
底面として考えると,赤色のベクトルが動いても
底面からの高さは変わっていないことがわかる.
したがって,行列式の値は変わらない.
なお,(1)~(5)の性質は各行において考えても成り立つ.