RESEARCHバイオイメージインフォマティクス
(田中グループ)

病原性微生物やがんマーカーの遺伝子検査

食品中への病原性微生物(大腸菌や黄色ブドウ球菌など)の混入は許されないため、未然に病原性微生物を検出し、その混入を防ぐ必要があります。これまでの微生物の検出・判別法は、主に微生物培養法に基づいており、煩雑な操作を必要とすること、検査時間を要することから、迅速に検出・同定する技術が求められています。当研究室では、DNAマイクロアレイを用いて病原性微生物を判定する遺伝子群を検出する技術、「シグナリングプローブ方式DNAマイクロアレイ」を開発しています。従来のDNAマイクロアレイで必要であった遺伝子増幅操作や蛍光ラベル、洗浄操作を必要とせず、簡便・迅速化かつハイスループットな検査が可能です。このシステムでは、核酸を含む細胞破砕物をDNAマイクロアレイに添加するだけで微生物の判定ができ、簡単に病原性微生物の混入を確かめることができるようになっています (図4)。

マイクロRNA (miRNA)は、mRNAに作用することで遺伝子の発現を調節する非翻訳RNAです。がん細胞ではmiRNAが異常発現し、血液中に放出されることが知られています。そのため、血液中のmiRNAを検出できれば、がんの早期診断が可能になります。このようなリキッドバイオプシーの技術はがん罹患者への負担が少ないことから、近年高い注目を集めています。そこで、上述のDNAマイクロアレイシステムを用いて、がんの早期診断技術の開発にも取り組んでいます。標的となるmiRNAの塩基配列に相補的なDNAプローブを設計し、高密度にアレイ化することで、さまざまな種類のmiRNAを一度の検査で網羅的に検出・解析することが可能となっています。

図4 シグナリングプローブ方式ハイブリダイゼーションアッセイの原理