生物は、環境の変化に対応するためにさまざまな適応戦略を進化させてきました。その中でも、予測応答や休止現象(休眠や冬眠、ダウアーなど)は、不適な環境を乗り越えるための重要な仕組みです(図1)。また、アリヅカコオロギ属のような特殊環境に生息する生物は、宿主との共生を通じて劇的な形態進化や生態的適応を遂げており、これらは生物の適応戦略の多様性を示す典型的な例といえます(図2)。
本研究では、環境適応の分子メカニズムを、ゲノム解析やマルチオミクス解析で解明することを目指しています。特に、非モデル昆虫や微細藻類を用いた比較ゲノム解析や、RNA-seq、ATAC-seq、プロテオミクス解析などの技術を活用し、環境シグナル受容から代謝・発育調節に至る複雑な制御ネットワークの解明に取り組んでいます。また、特殊環境生物の全ゲノム解析を通じて、生物間相互作用や共生進化の分子基盤の理解も進めています。
これらの研究は、分子生物学と生態学を橋渡しする新たな視点を提供するとともに、環境変化に対する生物の適応メカニズムの理解を深めることで、様々な社会課題の解決にも貢献することを目指しています。