近年、生物学や医学研究において、取得される画像情報をコンピュータで処理することで自動的・定量的に解析するバイオイメージインフォマティクスという研究領域が注目されています。この技術によって、これまで主観的に評価されていたデータを客観的に再現性良く解析することができ、これまでにない規模の画像情報処理が可能となっています。
当研究室では、バイオイメージインフォマティクス技術と機械学習を組み合わせ、微生物が増殖の過程で形成するコロニーの画像から菌種を判別する技術「コロニーフィンガープリンティング法 (Colony fingerprinting: CFP法)」の開発に取り組んでいます。従来の菌種判別法は複数の工程やコストを必要とするのに対し、CFP法は画像解析のみで検査が完了します。そのため、低コスト、迅速、そして自動的な病原性微生物検出システムとして環境評価や医療診断、食品製造管理など、さまざまな分野への応用が期待されます (図1)。
これまでに、当研究室では顕微鏡の視野の1,500倍以上の領域をわずか数秒で撮像可能なイメージングデバイスと培養装置を統合したCFPシステムを構築しており、シャーレ上の微生物を培養しながら撮像することに成功しています。
また、このシステムと機械学習技術を組み合わせることで、20菌種もの微生物種を画像情報のみで判別することに成功しています。現在は、デバイスおよび機械学習アルゴリズムの更なる改良や、解析対象とする菌種の拡張を行い、本システムの実用化を推進しています (図3)。