東京農工大学

受験生の皆様

研究TOPICS

再生可能な資源である「バイオマス」を航空機のジェット燃料に変換する技術を開発! 工学部 化学物理工学科 銭研究室現在は1/3、多いときには半分の学生が海外からの留学生という国際色豊かな銭研究室。

世界的に環境問題が注目される昨今、日本では、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることが目標として掲げられています。ここで期待されているのが、木材や海藻、生ゴミといった生物由来の資源「バイオマス」です。持続可能な社会の実現に適した、再生可能な資源であることが特長です。私たちの研究室では、このバイオマスを用いて、クリーンエネルギーやバイオマテリアルを製造する研究に挑戦しています。

研究例のひとつが、「バイオマスから航空機のジェット燃料を製造する技術開発」です。もともと航空機は石油から製造された灯油を用いて動く乗り物ですが、大量のCO2を排出することが問題視されてきました。そこで、石油の代わりにバイオマスを用いる方法が模索されています。これは一見して簡単なようですが、一筋縄ではいきません。

開発段階で鍵となったのが「触媒」です。触媒とは、化学反応を引き起こすために必要な物質のこと。バイオマス(植物油)を灯油に変換するプロセスにおいては、「水素化脱酸素」「異性化」「クラッキング」という3回の化学反応が必要で、すなわち3つの触媒を要します。これを私たちは試行錯誤の末に、ひとつの触媒ですべての工程を完了させることに成功したのです。1回の化学反応でバイオマスを灯油に変換できるため、バイオマスを燃料などに用いる際に最も課題視される「コストの高さ」も解消されます。現在は、2030年までにこの製造技術を実用化することをめざして企業と共同研究を進めています。

こうした研究でも明らかなように、私たちの研究室は「触媒をデザインする」技術力の高さに自信を持っています。触媒によって新たな変換プロセスを生み出すことで、再生可能な資源が有用なエネルギーになる。化学の力で社会課題を解決したいと考える意欲ある方がいれば、ぜひ一緒に研究しましょう。

一番右の軽油は、植物油(左)に水素化脱酸素と異性化の化学反応を引き起こす触媒(中央)を与えたもの
銭 衛華 教授

工学部
化学物理工学科
銭 衛華 教授

東京農工大学工学研究科物質生物工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。専門は、触媒・化学プロセス、環境関連化学ほか。2006年より東京農工大学で指導にあたる。

Student's Voice

金井基訓さん

大学院生物システム応用科学府
食料エネルギーシステム科学専攻 博士課程後期3年
金井 基訓さん

私立城北高等学校出身
バイオマス資源から、住宅の建材に使用される「潜熱蓄熱材」の原料をつくり出す研究に挑戦中。一般企業と共同研究を行った経験などを活かし、持続可能な社会を実現するための手助けをしたいです。

中林真佳さん

大学院生物システム応用科学府
生物機能システム科学専攻 博士前期課程2年
中林 真佳さん

福島県立安積高等学校出身
木質バイオマスの主成分であるリグニンから、生分解性プラスチックの開発などに用いられるバニリンという物質をつくり出す研究をしています。他大学と連携した研究にも積極的にチャレンジしました。

長澤瑠奈さん

工学部
化学物理工学科 4年
長澤 瑠奈さん

私立片山学園高等学校出身
非可食部分として安価で売買されるカシューナッツの殻から得た植物油を利用し、医薬品や化成品の原料となるフェノールをつくる研究を行っています。収率の増加を目標に、日々努力を重ねています。

※掲載内容は、2021年11月取材時のものです。