研究TOPICS
現代の社会における森林の役割は、木材の生産だけではありません。地球温暖化の緩和や生物多様性の保全など、環境保全のためのさまざまな機能が求められているのです。当研究室では、統計分析やフィールドワークを通じて、森林と人間の経済活動の関わりを研究しています。
森林の未来を考えるためには「自然環境」と「社会経済」の双方向からのアプローチが欠かせません。例えば、「ライフサイクルアセスメント」という環境評価手法に基づき、森林の伐採、運搬、加工から実際に木材として使用するまでにどれくらいエネルギーが使われているのか。また、ある地域の森林から伐採した木材資源を建築などの構造物に使用することで、現地にどれくらい雇用創出などの効果をもたらすのか。社会・経済の視点から、木材の有効利用のあり方を調べています。
また、木材の大きな機能として、光合成によって生成した炭素化合物を貯蔵する「炭素貯蔵」の役割があります。森林は大気中の二酸化炭素を吸収する機能を担っていますが、伐採されて木材として加工された後も、炭素を内部に貯蔵し続けてくれるのです。「環境保全」と聞くと森林保護だけに目が向けられがちですが、建物や家具などに使用される木材は長期にわたって人間社会に留まるため、地球温暖化対策を考えるうえでも非常に重要です。統計分析によって社会全体の木材の炭素貯蔵量を明らかにし、炭素の循環フローを解明するのも当研究室のテーマのひとつ。世界各国の木材に関する膨大なデータを分析することで、グローバルな視点から環境問題に取り組むこともできます。こうしたアプローチが、持続可能な社会の構築への第一歩になるのです。
農学部
地域生態システム学科
加用 千裕 准教授
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。
博士(工学)。
国立環境研究所特別研究員を経て、2012年から東京農工大学で指導にあたる。
Student's Voice
大学院農学府
自然環境保全学専攻修士課程2年
須鎗 秋桜子さん
徳島県立城東高校出身
世界各国の木材の炭素貯蔵量の変遷と将来予測を調べています。国ごとに報告されている膨大なデータを収集し、評価のパラメータを調整することで、炭素貯蔵量の調査手法の確立をめざしています。
大学院連合農学研究科
環境資源共生科学専攻博士課程1年
藤田 智郁さん
私立日本大学三島高校出身
研究テーマは「土木分野での木材利用における経済波及効果」。木材利用がもたらす地域への経済効果を、フィールドワークなどを通じて定量的に評価し、地域振興に貢献したいと思っています。
農学部
地域生態システム学科 4年
松本 遼斗さん
私立森村学園高等部出身
都市部の木造建築物の総床面積から、使用されている木材の炭素貯蔵量を算出する研究に取り組んでいます。まだ研究が進んでいない分野なので、自分の手でデータを掘り下げていく楽しさがあります。
※掲載内容は、2019年11月取材時のものです。