研究TOPICS
研究テーマは、航空機や新幹線などの「省エネ化」です。具体的には、こうした高速輸送機器の乱流摩擦抵抗によるエネルギー損失を抑制する基礎技術を開発しています。「乱流」とは、その名の通り、乱れた流れのこと。乗り物のまわりの流れを乱れた状態からキレイにすることで、大きな省エネ効果が期待できます。
乱流は適切な制御をすることで、劇的に性質が変化します。それがこの研究の面白いところ。これは、機械工学の基本である「4力(よんりき)」のひとつ「流体力学」をベースとする研究分野になります。
乱流を制御するために、私が目をつけたのがBiomimetics(バイオミメティクス)です。これは、動物をモデルとして、乗り物の表面の形状などを研究する分野。例えば、水中で高速で泳ぐサメの肌を分析すると表面に微細な溝(リブレット)があるのがわかります。そこで、サメ肌を模した規則的な溝のある壁面を開発し、表面の空気抵抗を調べます。実験では、まずコンピュータのシミュレーションで表面の流れを解析。理想的な壁面の形状が見つかったら、実物のモデルを作成し、さらに測定を繰り返します。その結果、研究室で開発したサメ肌を模した3次元構造の微細なリブレットが、約12%という世界最大の抵抗低減効果を示すことを確認。リブレットをジェット機の壁面として採用するJAXAとの共同研究も進んでいます。
研究と並行して、プレゼンスキルの養成にも力を入れています。研究室のメンバーには必ず月イチの発表を課し、英語発表にも挑戦してもらいます。在学中にメンバー全員が海外での学会発表を経験するのが目標です。
工学部
機械システム工学科
岩本 薫 准教授
東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了。
専門は環境負荷低減を目的とした熱・流体の制御技術。
2007年から東京農工大学で指導にあたる。
Student's Voice
工学部 機械システム工学科 4年
山西 渓太さん
山梨県立甲府第一高校出身
パイプラインに流体を流す際の摩擦抵抗低減を目的とした研究をしています。岩本研究室は、先生から1対1で指導してもらえる時間が多く、学びの密度の濃さが魅力だと思います。
大学院工学府 産業技術専攻 修士2年
藤野 大地さん
神奈川県立小田原高校出身
S字が連続したような形状の「正弦波状リブレット」を開発しています。レーザーを使った本格的な実験装置で空気抵抗を調べます。就職予定の機械メーカーでも実験スキルを活かしたいです。
大学院工学府 機械システム工学専攻 修士1年
吉永 憲史さん
東京都立大泉高校出身
メーカーとの共同研究で、自ら開発したリブレットを自動車のエンジンに取り付ける実験に力を入れています。プロの技術者の方から直接アドバイスをもらえるのは大きな刺激になります。
※掲載内容は、2016年11月取材時のものです。