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施設の概要

◆はじめに

 東京農工大学は経済産業省の平成21年度補助金の採択を受けて、果樹を対象とした「先進植物工場研究施設」を平成23年3月に整備した。
先進植物工場研究施設では、太陽光型植物工場(地上1階)および人工光型植物工場(地下1階)を利用して「春夏秋冬」を再現した6つの部屋を作り、最適な環境条件を設定した各部屋をブルーベリーの鉢が移動して、果樹のライフサイクルを早め、高収量・周年生産の実現を目指している。

◆果樹工場を建設した経緯

 現在の植物工場には、人工光型植物工場と太陽光型植物工場がある。人工光型植物工場ではレタスなどの葉菜類を中心に行われている。レタスなどの葉菜類は自然条件で栽培すると70〜90日間かけて収穫する。しかし、蛍光灯下で最適な環境で成育させると、成育が早くなり40日程度で収穫できる。また、蛍光灯などの人工光源が設置された多段ベッドで密植栽培を行うと、収量が飛躍的に多くなる。そこで、閉鎖的空間の中で人工光源を用いて完全に環境を制御した人工光型植物工場(閉鎖型植物工場とも言う)でレタスの周年生産が行われている。
また、トマトは栄養成長と生殖成長(花の分化と果実の成長)を同時に連続して行うため、蛍光灯よりも強い光が必要となる。太陽光を利用した大型栽培施設内で25段以上も収穫する高収量を目指した栽培が行われている。
従来の施設栽培にCO2の施用,高圧ナトリウムランプなどの人工光を用いた補光を行っているので、太陽光型植物工場と言われている。
一方、果樹では植物工場の事例はみあたらない、その理由は果樹は樹高が高く、大きな空間が必要なわりには収量が少ない。また、実生から数年して結果年齢を迎え、花芽分化、休眠、開花、果実肥大を経て1年に1回しか収穫できない。さらに、収穫期間も短く周年栽培が確立していないため、経済栽培が成り立つ植物工場ができないと言われている。
しかし、オフシーズンには輸入が行われている果樹があることから、生産者はオフシーズンに収穫できる栽培法の開発を望んでいる。これまでにも、休眠が終了した12月下旬以降にハウスを加温する促成栽培が、ブドウ、サクランボなどで行われている。これらの栽培法は出荷期の幅を拡大できる方法であるが、周年生産するには至っていない。
 果樹は花芽分化、休眠、開花、果実肥大を経て成長するため、植物体に四季を経験させることが必要である。言い換えれば「春夏秋冬」の四季の温室を作り、それぞれの部屋の環境を制御できれば、いつでも生産できる。
開花時期を少しずつずらせば、周年栽培が可能となる。また、四季の部屋の環境を制御できれば成育が早くなり、開花、果実肥大、収穫、落葉、休眠の1年間のライフサイクル期間を6ヶ月と短くすることが可能になれば、同一の樹で年に2回の収穫が期待できる。さらに、果樹ではわい性台木(この台木を使うと穂木の樹高を低くすることができる台木のこと)を利用すると樹高が低くなり、鉢での密植栽培が可能になる。よって、ライフサイクルの短縮化、ポットによる密植栽培、適切な環境制御と肥培管理が実現できれば、周年化、高収量化が可能になり、果樹でも植物工場への道が開けると考えられる。


◆先進植物工場研究施設の特徴 

 そこで、東京農工大学では地上1階には太陽光型植物工場と地下1階には人工光型植物工場とを併用し、地上1階・地下1階の2階建構造である。地上のガラス室は果樹のライフサイクルを考慮して、春室(開花し受粉する部屋)、夏室(果実が成長し成熟する部屋)、秋室(来年度の花芽を形成し養分を蓄積する部屋)を設け、地下に晩秋室(葉が紅葉・落葉して休眠を誘導する部屋)、冬室(低温で休眠させる部屋)、早春室(休眠した芽が萌芽する部屋)の6部屋を設けた。すなわち、地上1階(太陽光型)地下1階(人工光型)の2階建構造で6部屋で四季を再現し、最適な環境条件を設定した部屋をブルーベリーの鉢が移動して、ライフサイクルを早め、安全性が高く、高品質の果実収量を高め、周年生産する先進植物工場研究施設を整備した。


施設の特徴

・地上1階、地下1階の2層構造
・四季を再現する6つの栽培室
・自動化システム研究に備えた設備
・太陽光パネル等の設置による省エネ
・エネルギー収支の「みえる化」
・研修室の設置

研究要素

・樹木移動栽培によるライフサイクル倍速化
・栽培環境高度管理による生産性向上
・機能成分などの品質向上
・病虫害・障害の画像解析システム
・樹体健康管理システム
・ICタグを利用した自動化システム



店舗イメージ

info.施設情報

〒183-8509
東京農工大学 大学院農学研究院
府中市幸町3-5-8
TEL.042-367-5655