研究内容

我々は植物の遺伝子組換えのターゲットとして、リグニンという物質に着目しています。リグニンとは植物の細胞壁の構成成分の一つであり、芳香系モノマーが重合して形成される疎水性高分子化合物です。維管束系組織の細胞のほとんどは成熟の過程で一次壁と二次壁(厚壁)を作ります。リグニンはセルロースとともに二次壁に含まれており、木部での水分移動や植物体の物理的支持などの役割を果たします。二次壁の乾燥重量の20~30%がリグニンで占められており、リグニンは植物全体からみても無視できないバイオマス量を占めています。よく鉄筋コンクリートの鉄筋がセルロース系繊維、コンクリートがリグニン、と例えられるほど、地上植物すべてにとってリグニンは、必要不可欠な物質です。

しかしながら、あまりに強固に結合しているために、人間がセルロースを加工する際、たとえば製紙業やバイオエタノール生産において、リグニンは邪魔者になってしまっています。現状ではリグニン除去は化学的な手法で行なわれており、エネルギーを多量に消費する過程です。また、木材中におけるリグニンの含有量が高いことは、セルロースを分離した後の廃棄物もまた多くなることを示しています。 そのため、現在は木材中のリグニンの含有量を下げセルロース含有量を上げる研究や、リグニンを分解しやすい組成にする研究、リグニンを容易に分解できる技術・触媒の研究などの様々な研究が広く行われています。

我々の研究室では植物の形質転換により、脱リグニンが容易な植物体やリグニン含有量を減らした植物体をつくることを目指しています。またリグニン生合成に関わる酵素の解析や重合機構の解明も行なっています。リグニンの構造やリグニン生合成に関わる酵素の基質特異性を改変することによって、植物の病害虫耐性、塩耐性や難分解性環境汚染物質重合能も変化する可能性があり、今後はそれらの観点から研究を進めていくことも検討しています。


以下に主な内容の研究を示します。