リグニン分解系酵素発現植物の作出

リグニンは全ての陸上高等植物により生産されるフェニルプロパノイド系二次代謝産物として、植物体の構造的な支えの他、傷害・病害や草食動物の食害に対する抵抗性に寄与しています。 しかし一方で、リグニンはパルプの脱色・バイオエタノールの製造や、家畜体内での消化の阻害要因にもなっています。 そのため、植物バイオマスの有効利用には脱リグニンのための処理が必要となります。

脱リグニンの方法としては、アルカリ蒸解法などの化学的処理が用いられています。 しかし、この方法には大量の薬品とエネルギーを使用するためコストがかかります。また、リグニンの分解能をもつ白色腐朽菌を用いた方法には、長い時間がかかるという問題点があります。 そこで、先行研究において、アラビノフラノシダーゼ遺伝子を導入したイネの作出が為されました。このイネ形質転換体は脱リグニンが容易であることが期待されます。

リグニンはフェルラ酸残基を介したエステル・エーテル結合によりセルロースやヘミセルロースのような構造性多糖と結合し、LCCという構造を形成しています。

LCCと多糖間の結合を切断する酵素に、腐生担子菌由来の細胞外分泌炭水化物アラビノフラノシダーゼがあります。このアラビノフラノシターゼは、ヘミセルロースの一種であるアラビノキシランのアラビノースとキシラン間の結合を切断します。この切断により、LCCのリグニンと多糖との間の結合を減少できれば、脱リグニンが容易になると考えられます。



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