RESEARCHナノマテリアル開発

ナノ磁性粒子ライブラリーの開発

当研究室では、様々な疾患に関連する膜タンパク質をマグネトソーム上に発現させることにも成功しています。これらの膜タンパク質は重要な創薬ターゲットとして知られているため、膜タンパク質-マグネトソーム複合体を用いることで、新薬探索ツールの開発が可能であると考えています。これまでにC型肝炎ウイルスの感染機構に関与する膜貫通タンパク質CD81やGタンパク質関連型受容体であるヒト甲状腺刺激ホルモン受容体 (Thyroid-stimulating hormone receptor;TSHR) 、さらにアルツハイマー病やうつ病などの精神疾患に関連しているチロシンキナーゼ受容体であるTrkA の機能発現に成功しています。

こうした技術開発により、現在までに以下に示す膜タンパク質-マグネトソーム複合体の創出に成功しています。このような膜タンパク質-マグネトソーム複合体は、反応液中から機能性タンパク質と結合する特定の物質のみを効率的に磁気回収することができます。この原理は、環境サンプルからの標的物質の回収や血液中からの標的細胞の分離など、幅広い分野に応用可能です。

マグネトソームの膜脂質改変

当研究室では、マグネトソームの有用性を拡大するために、様々な技術を確立しています。そのひとつが、マグネトソームの膜脂質改変です。膜タンパク質の機能は足場となる膜脂質に大きく影響されることが知られており、真核生物と原核生物の脂質組成は異なることがわかっています。そこで、磁性細菌の脂質代謝経路を改変することで、膜脂質が異なるマグネトソームの創出に成功しました。脂質組成を改変したマグネトソームでは、マグネタイト結晶が大きくなることや、発現させた膜タンパク質の機能が向上することが発見されています。