マグネトソームディスプレイ技術
磁性細菌が生合成する磁気微粒子
磁性細菌とは、環境中の鉄イオンを取り込むことで磁気微粒子（マグネトソーム）と呼ばれるナノサイズの磁石を細胞内に合成することができる微生物です。このマグネトソームは、脂質膜に覆われたマグネタイト（磁鉄鉱）からなる結晶で、サイズや形態が均一であることや、水中での高い分散性、生体に対する高い適合性といった、人工のナノ磁石と比較して優れた特徴を有しています。これらの特性を利用して、様々な応用がなされてきました。
マグネトソームディスプレイシステム
磁性細菌は、大腸菌等と同様に遺伝子組換え技術を用いることで外来タンパク質の生産宿主として利用することが可能です。磁性細菌を宿主として用いることの利点は、マグネトソーム表面へ外来タンパク質を提示 （ディスプレイ）できることです。
マグネトソーム表面上に最も多く存在するMms13タンパク質は、抗体、酵素、受容体などの様々な外来タンパク質（ターゲットタンパク質）の「アンカー分子」として利用することが可能です。当研究室では、このMms13タンパク質を用いて外来タンパク質をマグネトソーム表面上に固定化することで、機能性のマグネトソームを創製する「マグネトソームディスプレイシステム」を開発し、マグネトソームの表面を自在に制御することに成功しました。さらに、マグネトソーム上のターゲットタンパク質のディスプレイ量の増大や、発現時期を制御するためのプロモーター検討、膜脂質の改変技術等を開発し、合成生物学的なホスト-ベクター系の構築を進めています。
