先輩たちからのメッセージ


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新卒研生採用情報


学部4年 B4 古謝 望

-先輩達からのメッセージ 2014、第3回は古謝望さんにお話をうかがいます。-

-お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。

今回は古謝さんの研究生活や体験談をもとに色々とお聞きしたいと思います。

まずは古謝さんの研究内容についてうかがわせてください。-

こんにちは、学部4年の古謝です。

私は「テラヘルツ波帯の伝送線路」の研究をしています。

伝送線路といってもただ単純に電線に電流を流すのではありません。

伝搬させる電磁波の波長に対して、
非常に微細な金属を周期的に配置した構造を用いて電磁波を伝搬させます。


-微細周期構造というのが少し分からないのですが、
実際はどのような構造なんですか?-

基板上に金属の柱(ポスト)を立て、それを一列に周期的に並べたような構造です。

このような金属の微細周期構造を設けることによって電磁波をぎゅっと閉じ込めることができます。

これを遅波効果というのですが、この状態の電磁波は字のごとく、
空間を伝播する位相速度と比較して遅くなります。
そしてさらに周波数が高くなると、分散関係というものが
フラットになり、ぎゅっと電磁波が閉じ込められます。


-なんだか面白そうですね!通常の伝送線路ではなく、
この特殊な構造を用いる理由は何ですか?-

普通の伝送線路は基板上、つまり2次元平面を電磁波が伝搬します。

ですが!

この構造の面白いところは、
基板のやや上部、ポスト部分の準3次元空間を伝搬させることができます!

私の研究の目標は、電磁波が3次元空間を
自由に伝搬することのできる伝送線路を設計することなんです。

言い換えると、「伝送線路の構造の拡張」を目指しています。
構造の拡張は、伝送線路に更なる可能性を与えることになります。

テラヘルツ波帯はまだまだ未開拓な研究分野で、これからの発展が期待されています。
可能性に満ち溢れた、未開拓な分野に挑戦できるのはとてもワクワクします。
いつかはテラヘルツ波帯の研究史に「古謝」の名前を刻んでやろう!、なんてね(笑。


-研究で自身の名を残す。とても大きな目標ですね。
昨年の秋には応用物理学会で発表されたとのことですが、
発表までの過程や学会についてお聞かせください。
-

学会は研究者にとっての全国大会です。
出場資格は研究成果、といったところでしょうか。
日々懸命に研究をして、ようやく辿り着ける晴れ舞台です。

学会の発表までには、色々な困難がありました。

まずはなんといっても研究です。
私は主に、電磁界シミュレータを用いた解析によって、
先ほどお話した伝送線路を設計したり、設計した伝送線路の性能を調べたり、
という形で研究を進めています。

その解析も、足りない研究データを補うための解析、
今あるデータを突き詰めるための解析、
などさまざまです。

解析の結果が間違っていて、一から解析をし直すこともありました。
ですが、想定した結果が導けたときの喜びはひとしおです。

研究成果が溜まってきたら、次に予稿を作成します。
あらかじめ自分の研究内容を学会に提出する、それが予稿です。

積み重ねた膨大な結果の中から、
必要な情報のみ簡潔かつ明瞭にA4サイズにまとめあげます。

これが非常に難しい。

多くの情報をそのまま伝えるのは簡単ですが、
少ない情報で多くのことを伝えるのはそう簡単には行きません。
でも理系で仕事をしていくためにはとても大切な能力だと思います。


そしてスライドの作成です。
スライドの作成にもしっかりと時間を掛けます。

どんなスライドなら、相手にとって分かりやすいのかを常に考える必要があります。
一回作っただけでうまくいくことはなく、
図面やグラフの配置の調整を何度も行い、より良い物を作り上げていきます。
先輩にも何度も確認していただき、どんどん良いスライドができていきました。


最後に発表です。
スライドが完成した後は、ひたすら発表の練習をしました。

ただ説明するのではなく「伝える」ことを意識して。
発表会場に着いてからも何度も何度も練習を繰り返しました。

発表会場は広くて、多くの人がいてとても驚きました。
空気は思っていたよりも張り詰めていて、
今まで経験したことのない「学会」特有の雰囲気を肌で感じました。

発表中は終始緊張しきりでしたね。
質疑応答の際には喉がカラカラで(笑

でも、自分の研究に興味を持って質問をしてくれる。
こんなに嬉しいことは他に無いです。

発表することでしか味わえない、その場の緊張感、
それからやりきった後の達成感を味わえたのは
とても良い経験になりました。

また、他の研究者の最新の研究成果はとても刺激になります。

今後も国内学会や国際会議に参加して
どんどん自分の経験値を蓄えていきたいと思っています。


-
学会発表は研究実績、そして自分の成長にもつながるんですね。
研究に情熱を注いでいる古謝さんが鈴木研究室を志望した理由は何ですか?-

先生や先輩方の影響が大きかったと思います。

私は特にこの研究がしたい!という考えはなくて、
学部3年の頃の私にとってはどこの研究室も
目移りするくらい楽しそうな研究をしているように見えて(笑。

研究室を色々回ってみて、先輩から色々な話を聞きました。
打ち上げや飲み会が楽しいとか、毎週サッカーする日があって楽しいだとか、
研究以外にも色々とするんだな、とかそんな漠然とした感想を
抱きつつ研究室をめぐっていました。

そんな中、鈴木研究室を見学し説明を聞かせてもらいました。
鈴木先生や研究室の先輩方が、ギラギラした目で
楽しそうに「研究」の話をしていたのが印象深かったです。

そういえば「研究」について深く話してくれた研究室はここだけだなぁ、
と最初はそんな感想だったと思います。

ひと通り研究室を回ってみて、改めて自分を振り返ってみたんです。

自分は何がしたいのか。
何のために大学へ進学を決めたのか。
自分のやりたいことができる研究室はどこか。
私は知らないことをたくさん学びたい。「研究」がしたい。

そう改めて考えたときに、
鈴木研究室なら本気で研究ができそうだということで志望しました。

今となっては、自分の研究の魅力を自分の言葉で他の人に語ること、
それがいかにに難しいかを学会での発表や、普段の研究を通して痛感しています。

自分が鈴木先生や鈴木研究室の先輩方に心を動かされたように、
自分も研究で他人の心を動かせるようになりたいですね。




- 人に何かを「伝える」のは難しいことですが、
ぜひ研究を頑張っていろんな人のハートもキャッチしちゃってください。
最後に、古謝さんは来年どんな新人を期待していますか?-

そうですね(笑。

後輩に期待すること、そうですね。
人からの期待に対して真っ向勝負できる人、
どんな状況でも前を向いて頑張れる人ですね。

例えば、重圧や責任感に押し潰されそうな時。
その状況から逃げ出さず真っ向から正々堂々立ち向かおうとする、そんなバイタリティに満ちた人が配属されてほしいです。

どんな困難にもチャレンジしてみる。駄目でも何とかやってみる。
そんな人と一緒に研究がしたいです。

もちろん、一人でできることには限界があります。

助けが必要なときは、皆、全力で助けます。
それがチームで、鈴木研究室ですから。

そんな方が来てくれたら、今よりももっと研究室生活が楽しくなりますね。

 

古謝 望
1991年沖縄県生まれ。2013年4月に鈴木研究室に配属。テラヘルツ波帯の伝送線路の研究に従事。現在、5月にシンガポール行われる国際会議を目指して研究に取り組んでいる。