本研究室では、信号処理分野におけるさまざまな課題に対して、主に数理的な観点からの研究に取り組んでいます。
ここでは、本研究室で行っている研究テーマの一部を紹介します。
(研究紹介ポスター)
未知の信号を観測データから復元する信号復元では、復元の精度や計算コストはもちろんのこと、信頼性・解釈性・汎用性なども重要な要素になります。 これらの要素を兼ね備えた手法として、数理モデルを用いた最適化に基づく信号復元と機械学習技術を融合させるアプローチがさかんに研究されています。
たとえば「深層展開」という方法では、反復的なアルゴリズムとニューラルネットワークの類似性に着目し、反復計算に含まれるパラメータを学習することで、計算速度や復元精度の向上を図ります。 「Plug-and-Play」と呼ばれる方法では、深層学習に基づく優れたノイズ除去手法を従来の最適化アルゴリズムに組み込むことで、画像復元の精度向上を目指します。 本研究室では、モデルベースの手法とデータ駆動の手法を相補的に組み合わせたさまざまな信号処理技術についての研究を行っています。
ノイズ除去・ぶれ除去・超解像・MRI(Magnetic Resonance Imaging)・CT(Computed Tomography)など、劣化した観測データからきれいな画像を求めることを画像復元と呼びます。 高精度な画像復元を行うためには、画像の性質をうまく活用し、復元対象の画像に合わせた処理を行うのが重要になります。 本研究室では、画像の性質の数理的モデル化やデータ駆動型のアプローチを適切に組み合わせた画像復元アルゴリズムの開発を行っています。
多くの信号処理アルゴリズムではその構造は固定されていますが、さまざまな応用タスクに合わせて適切なアルゴリズムを設計するには高度な数理的知見が必要になります。 本研究室では、そのようなアルゴリズムの適切な構造をある程度自動的に学習するアプローチについて研究しています。 対象とする信号やデータの特性に合わせて優れた信号処理アルゴリズムを自動的に設計する方法論の確立を目指しています。
信号のサンプリングを行うためのアナログ-デジタル変換器ではサンプリングできる値の範囲が決まっており、その範囲を超えた値は正確にサンプリングできません。 その対策として、信号がその範囲に含まれるように剰余演算を用いて「折り返して」からサンプリングを行う剰余サンプリングという手法が検討されています。 この剰余サンプリングによって得られた結果から、元の信号を復元するための手法について研究しています。
圧縮センシングや無線信号検出のための信号復元アルゴリズムでは、復元誤差をできるだけ小さくすることが重要です。 一般には復元誤差を事前に評価するのは困難ですが、いくつかの仮定のもとでは誤差の値を理論的に評価することができます。 本研究室では、最適化や確率推論のテクニックを用いて、信号復元のための最適化問題や最適化アルゴリズムに関する理論解析を行っています。 このような理論解析の結果は数学的に興味深いだけでなく、アルゴリズムの設計やパラメータの調整に役立つことが期待できます。