Makoto Watanabe's laboratory
Tree Physiological Ecology under Changing Environment

東京農工大学 農学部 環境資源科学科 渡辺誠研究室

研究内容

 本研究室では変動環境下における樹木生理生態学を研究しています。森林の主要構成種である樹木は、葉における光合成を起点とした炭素固定を行う事によってCO2などの温室効果ガスによる地球温暖化の低減に貢献しています。また、健全な樹木によって構成される森林は、木材などの木質バイオマスを始めとして多くの資源生産を通じて、私たちの生活を支えてるとともに、野生生物の生息・生育の場として生物多様性にも大きく貢献しています。
 樹木はその生育に数十年〜数百年を要します。つまり、今日芽生えた樹木が成木になるまでに数十年を要し、さらに数百年生きる樹種も珍しくありません。したがって、健全な森林を維持するには、少なくとも数十年先の環境まで考える必要があります。しかしながら、産業革命以降、化石燃料の消費拡大に代表される人間活動によって、森林を取り巻く環境は劇的に変化しています。特に大気CO2の濃度や窒素沈着量の増加、気候変動やそれに伴う異常気象、そして大気汚染物質である対流圏のオゾンは森林生態系への影響が極めて大きい環境要因として世界的に懸念されています。
 そこで本研究室では、私達人類の生存基盤である森林を構成する樹木の環境変動に対する応答の解明を目的として研究を行っています。研究に当たっては、光合成による炭素の獲得、獲得した炭素(炭水化物)の利用(成長、二次代謝)そして炭素の放出(呼吸、落葉など)というように、炭素の動きを中心に、それを制御する窒素との関係に着目しながら、葉や個体の物質生産に関わる性質が環境変化に対してどのように応答するのかを明らかにすることを目的としています。また、環境変化に対する樹木の応答には樹種間差異があり、さらに同じ樹種でも生育条件によって環境変化に対する応答が変化する事が知られており、それらのメカニズム解明に関する研究も行います。
 一方で、森林・樹木は環境変動の影響を受けるだけでなく、逆に環境に影響を与えています。光合成に伴う酸素の放出は最も有名なものですが、大気CO2濃度上昇の抑制、蒸散によるヒートアイランドの緩和など、地球レベルでも都市レベルでも、樹木は私たちの環境の安定化に貢献しています。私たちの研究室では、都市域における大気オゾンの浄化の視点から都市緑地の樹木の葉における気孔を介したオゾンの吸収能力の評価について、中国との国際共同研究として取り組んでいます。
 研究手法は大きく@実験的研究とA野外調査の二つに分けられます。@実験的研究では、ポットに植えた苗木を対象にオゾンやCO2の暴露、土壌への窒素添加などを行い、その応答を調査します。A野外調査では、様々な環境に生育する樹木を対象に生育環境と樹木の特性の関係性を調査します。いずれの研究においても主役は樹木であり、その成長、光合成活性、養分利用性および食害抵抗性などの評価を行います。さらには地理情報システムを用いた環境情報学的手法によるリスク評価も行っています。先人達の努力によって、これまでにも数多くの興味深い事象が樹木生理生態学の分野で得られていました。しかしながら、将来の環境における樹木の生理生態学的機能やその役割を予測するには、まだまだ知見が足りません。将来にわたる健全な森林の維持のために、私たちとともに樹木の不思議に迫りませんか?

最近の主な研究テーマ
<実験的研究>
・ブナに対するオゾン、高CO2および土壌窒素添加実験
  -光合成の光強度変化に対する応答の解析
  -オゾンによる気孔応答の鈍化の評価
・コナラの窒素利用特性に対する、土壌窒素・リン添加実験
・光環境の変化に対する林床外来種の応答実験


<野外調査>
・異なる養分環境で生育するコナラ成木樹冠の葉の食害抵抗性
・林内と林縁におけるミズナラ成木樹冠の光合成分に対する窒素利用特性
・成木および森林のオゾン吸収量の推定(都市緑地の大気浄化機能評価)
・林床外来種の光利用に関する生理生態学
・光合成特性の樹冠内鉛直分布の解析
・細根からの有機炭素滲出と窒素無機化の関係


<その他>
地理情報システムを用いた都市域の樹木によるオゾン吸収量の推定

 本研究室は基本的に植物を扱う研究室ですが、研究室配属までの経歴(例えば高校で生物を取っていたなど)は特に問いません(私自身、高校の理科では生物を選択してません)。また、他大学の学生で修士課程や博士課程からの入室も歓迎です。

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