香取研/磁性に興味のある学生さんへ

 香取研究室が研究対象としている「磁性」は古くから研究されてきていますが、結晶構造や磁気構造の違いによって様々なタイプの相転移が起こるため、仕組みが明らかになっていない相転移がまだまだ存在しています。また、これまで研究されていなかった結晶構造や磁気構造をもつ磁性体も次々と見つかっています。香取研究室では、誰も合成したことがない新しい磁性体を自分たちの手で作り出し、その磁性体で生じる相転移や相をさまざまな実験手法を用いて調べることにより、相転移の機構を明らかにすることを目指しています。現在は特に「磁性スピン軌道結合磁性体」「フラストレート磁性体」を中心に研究を行っています。

 「磁性」は物理学の様々な専門知識が必要な研究分野です。磁性の起源となる電子の振舞いを扱うには量子力学が必要となります。また荷電粒子の運動や磁場中での磁気モーメントの振舞いを理解するためには、電磁気学が必要です。固体では 1023 個のオーダーの磁性イオンが格子を形成しており、それらの磁気モーメントの平均値を計算するためには熱統計力学の知識が重要になります。また、物質合成のために、無機化学の知識や物理化学の知識が必要になる場面もあります。

 このように、磁性の研究に必要となる学問はいろいろ挙げられますが、実際に研究活動を行うと、大学で学んできた学問から得た深い知識だけではなく、日常生活の中から得た幅広い知識やアイデアを総動員して「考える」必要がある場面にたくさん出会うことになります。また研究を遂行するためには、何にでも興味を持ち、わずかな変化にも気が付き、自分で考えて行動し、疑問に思うことを解明するための努力を惜しまない姿勢が大切です。

 香取研究室では、磁性や固体の電子物性に興味のある人はもちろん、一から何かを作りたい人、装置の開発・作成に興味のある人、未知の試料合成に挑戦したい人、体力に自信のある人、等々、何事にも積極的にチャレンジする学生さんを求めています。物理の楽しさ、研究の面白さを一緒に体験しましょう。「研究」というものが、これまでの受動的であったであろう「学習」とは全く異なることを、是非、知って欲しいと思います。




update : 31 March 2019