研究成果
| 生体軟組織の電気分極を発見し画像化に成功,新規診断ツール開発に期待 |
| 超音波で電気・磁気物性を可視化する |
| 非破壊で物質や生体の電気・磁気特性を検出する技術を開発 |
研究テーマ
| 医療機器開発 | 汎用超音波エコー画像(Bモード)に重畳し,生体圧電効果に由来する電気的シグナルを可視化する新しい医用画像機器を開発しています.専用の超音波フロントエンド,アレイプローブ,受信回路,信号・画像処理,ユーザーインタフェースに至るまで,スタートアップASEMtechと協働でハードウェアとソフトウェアを一貫して設計・開発しています.
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| 臨床研究 | 順天堂大学医学部附属病院において臨床研究を開始しています.まずは,ばね指や手根管症候群など,手の外科領域の疾患を対象に,ASEM画像の臨床的有用性を検証しています.
今後は対象疾患・診療科を段階的に拡大し,国内外の大学病院との連携のもと,臨床研究を展開していく計画です.
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基礎研究 | 超音波は,人間の耳には聞こえない高い周波数で振動する音です.骨,アキレス腱,大動脈壁,大動脈弁などの様々な線維状生体組織において,超音波の圧力(音圧)によって電気分極を生じることを発見しました.また,脂肪組織や心筋などの非線維状組織では圧電性が小さいこともわかっています.これらの結果から,コラーゲンやエラスチンを主成分とする線維状の生体組織は比較的大きな圧電性を有していることが示唆され,病理組織学的評価との関連性を追求しています.
腱・靭帯損傷:
超音波誘起される電気分極は線維組織の配向度に依存し,外部引張応力に大きく依存します.この現象を利用し,腱・靭帯損傷の予防・診断に役立てたいと考えています.
一方,末梢神経からの圧電分極も観測されており,超音波による神経系の診断・治療について強い関心をもっています.
Nature Research Highlights: 生体圧電気:生体軟裾機は応力下で電気をつくる
APS Physics: Soft Biological Tissues Can Be Piezoelectric.
K. Ikushima et al., Phys. Rev. Lett. 123, 238101 (2019).
J. Kikuchi et al., Jpn. J. Appl. Phys. 63, 04SP17 (2024).
(左)従来Echo法とASEM法との比較. (右)アキレス腱における超音波誘起分極のイメージング. |
| 骨粗鬆症 |
超高齢社会を迎えた現在,要支援・要介護状態にある期間をできる限り短くし,健康寿命を延ばすことが喫緊の課題となっています.要支援・要介護に至る主な要因の一つが,関節疾患や骨折・転倒などによる運動器の障害です.本研究では,音響誘起電磁法(ASEM法)を用いて,運動器の「質」,特に組織を構成する線維の配向性を,安全かつ繰り返し評価できる診断技術の確立を目指しています.本技術の実現により,運動器疾患の予防・早期診断・治療を効果的につなぐ医療サイクルの普及を促進し,健康寿命の延伸と,活力ある未来社会の実現に貢献することが期待されます.
骨は,ハイドロキシアパタイトを主体とする無機成分と,コラーゲンを主体とする有機成分などから構成されています.現在,骨粗鬆症は主に骨のミネラル量を反映する骨密度によって評価されていますが,近年では,コラーゲン線維の状態など,骨密度だけでは捉えられない「骨質」の重要性も認識されるようになっています.本研究では,非侵襲的かつ簡便に骨コラーゲンを評価できる技術を実現し,骨粗鬆症の予防・早期診断・治療をより効果的につなぐ,新たな医療サイクルの構築を目指しています.
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健康な骨と骨粗鬆症モデルのASEM画像(ラット大腿骨) |
| 慢性心筋梗塞 | 心臓に血液を送る冠動脈が詰まると,心筋への酸素供給が不足し,心筋細胞が壊死します.その後,壊死した心筋を置き換えるように,コラーゲンを主成分とする瘢痕組織が形成され,心筋の線維化が進みます.心筋線維化は,心筋梗塞などの虚血性心疾患だけでなく,非虚血性心疾患でも生じることがあります.本研究では,ASEM法を用いて心筋線維化を評価する新たな診断技術の実現を目指し,医療機器の開発を進めています. |
| 慢性腎臓病 | 慢性腎臓病(CKD)は,腎臓の障害や機能低下が長期間続く病気です.国内の患者数は約2,000万人,成人の約5人に1人と推計されています.病気が進行すると,透析療法や腎移植が必要になる場合があります.また,腎機能の低下が比較的軽度であっても,心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を発症するリスクが高まることが知られています.慢性腎臓病の進行に伴って腎臓にコラーゲンが過剰に蓄積すると,腎線維化が生じ,腎機能がさらに低下します.本研究では,ASEM法を用いて腎線維化を検出・評価する新たな診断技術の開発に取り組んでいます.
ラット腎臓の超音波誘起分極のイメージング.正常腎(左)と腎不全モデル(右) |
