IKUSHIMA GROUP

研究成果

生体軟組織の電気分極を発見し画像化に成功、新規診断ツール開発に期待
超音波で電気・磁気物性を可視化する
非破壊で物質や生体の電気・磁気特性を検出する技術を開発

研究テーマ

基礎研究 超音波は,人間の耳には聞こえない高い周波数で振動する音です.骨,アキレス腱,大動脈壁,大動脈弁などの様々な線維状生体組織において,超音波の圧力(音圧)によって電気分極を生じることを発見しました.また,脂肪組織や心筋などの非線維状組織では圧電性が小さいこともわかっています.これらの結果から,コラーゲンやエラスチンを主成分とする線維状の生体組織は比較的大きな圧電性を有していることが示唆され,生化学的機能との関連性や医療診断への可能性を追求しています.一方,超音波による神経活動の検知や制御についても強い関心をもっています.
Nature Research Highlights: 生体圧電気:生体軟裾機は応力下で電気をつくる
APS Physics: Soft Biological Tissues Can Be Piezoelectric.
K. Ikushima et al., Phys. Rev. Lett. 123, 238101 (2019).

ASEMconcept tendon

(左)従来Echo法とASEM法との比較. (右)アキレス腱における超音波誘起分極のイメージング.

運動器官 超高齢社会では,要支援・要介護状態をできる限り短くすることが喫緊の課題です.要支援・要介護状態に至る最大の要因の一つは,「関節疾患」と「骨折・転倒」による運動器官の障害です.本研究では,音響誘起電磁法(ASEM法)を用いて,安全でくり返し検査を可能とする運動器官の”質”(線維配向性)を診断する技術を確立することです.本診断技術の実現は,運動器官の予防・診断(検診)・治療の効果的なサイクルの普及を促進し,健康寿命の延伸と活気ある未来社会の構築に貢献することが期待されます.

腱・靭帯損傷:
超音波誘起される電気分極は線維組織の配向度に依存し,外部引張応力に大きく依存します.この現象を利用し,腱・靭帯損傷の予防・診断に役立てたいと考えています.
骨粗鬆症:
骨の主成分は,体積比にしてハイドロキシアパタイトとコラーゲンが1:1です.現在,骨粗鬆症は主にハイドロキシアパタイトの量に相当する骨密度で評価されていますが,近年コラーゲン線維の劣化などの“骨質”の重要性が認識されるようになっています.本研究では,非侵襲で簡便な骨質評価技術を開発し,骨粗鬆症の予防・診断・治療のより良い医療サイクルの実現を目指しています.

Bone

健康な骨と骨粗鬆症モデルのASEM画像(ラット大腿骨)

心筋梗塞 大動脈が詰まると,虚血により心筋細胞が壊死します。心筋梗塞では,その壊死した細胞の跡を埋めるようにコラーゲンの蓄積が起こり,心臓が線維化します.また、非虚血性心疾患であっても線維化が生じる場合があります。現在,様々な心疾患における心筋の変性(線維化)に関する診断の実現に向けて,医療機器の開発を推進しています.
慢性腎臓病 慢性腎不全などの腎臓病は国内に1000万人以上(成人の8人に1人)いるとされています.重症な場合,透析治療や腎移植が必要となります.また,軽症であっても,心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を招くおそれがあることが分かってきています.この慢性腎臓病におけるコラーゲンの蓄積を検知する技術開発を始めています.

Kidney

ラット腎臓の超音波誘起分極のイメージング。正常腎(左)と腎不全モデル(右)

3D細胞培養 人工的に細胞を3次元的に培養する技術開発が活発化しています.本研究では,3次元細胞組織内部のコラーゲン蓄積やがん細胞の検知など,新たな評価法の開発に取り組んでいます.

3D1 3D2

3次元細胞培養のエコー像

食品 極洋(株)との共同研究「食品の半解凍状態を非破壊に測る」が新聞報道されました(2018年9月7日 日本産業新聞).氷と水が混合した状態である半解凍状態では,水の潜熱により温度がほとんど変化しません.したがって,温度センサーでは評価することが困難です. 今回,水と氷の誘電率が大きく異なる周波数帯に着目し,魚の冷凍~半解凍~解凍状態を非接触・非破壊に検査する技術を開発しました.この技術は,食品の安心・安全,味の向上,加工の効率化の他に,医療における冷凍・解凍技術にも活かされる可能性があります.

3D1

食品の冷凍解凍技術の開発

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