研究成果
グラフェンから波長可変な赤外発光を世界で初めて観測 |
半導体チップ上でテラヘルツ波の粒を発生/伝送/検出に成功 |
世界初!テラヘルツ波の光の粒を捕らえて画像化することに成功 |
研究テーマ
量子輸送現象 | 半導体2次元電子系における量子ホール効果、量子ドットや量子井戸、およびグラフェン等の原子層マテリアルの量子輸送現象の研究をしています。これらの固体チップ上で実現する量子現象は、テラヘルツ機能素子や量子状態の制御・検出としての可能性も秘めています。 光子系、格子系、スピン系と絡めて新たな量子情報処理の可能性も視野に入れて研究しています。 |
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THz光子検出 | 量子ドット,量子井戸,量子ホール効果など,低次元半導体における様々な量子構造を利用して,THz帯域の単一光子検出器を開発しています.
最近では,GaAs/AlGaAs多重量子井戸構造を利用した中赤外光領域のフォトトランジスタに着目しています.従来の中赤外光検出器より,少なくとも2桁以上の感度を誇る検出器です.デバイスを微細化することにより,中赤外光領域の単一光子検出器の実現を目指しています.
D. Nakagawa et al., Jpn. J. Appl. Phys. 57, 04FK04 (2018).
多重量子井戸を利用した赤外フォトトランジスタ |
THz光子生成 | 半導体ヘテロ構造やグラフェンにおける2次元電子系に強い磁場を加えると,電子のサイクロトロン運動が量子化し,運動エネルギーが量子化します(ランダウ分裂). このような状況下において,ホール抵抗が量子化し,縦抵抗がゼロになる現象が生じることがあります(量子ホール効果).私たちは,この量子ホール効果にある2次元電子系において,ある条件下ではTHz発光が生じることを発見しました.これは,電流印加により非平衡キャリアが注入され、ランダウ準位間で光学遷移(ランダウ準位発光)が生じるためと考えられています.最近では,単層グラフェンにおけるランダウ準位発光を世界で初めて観測することに成功しました.このランダウ準位発光を検出することにより,グラフェン等の2次元電子系における非平衡キャリアの生成・緩和過程を明らかにすることができます.また,このランダウ準位発光を超放射や光増幅などの新たなテラヘルツ光源の開発に結び付けたいと考えています.
F. Inamura et al., APL Photonics 9, 116101 (2024).
K. Ikushima et al., Phys. Rev. B 84, 155313 (2011).
グラフェンからのランダウ準位発光(左)。量子ホールエッジ状態からのランダウ準位発光(右)。 |
THz光子回路 | THz単一光子検出器とTHz光子発生源をひとつのチップに集積し,電子の量子性と光の量子性との相互作用を研究しています.1個の電子と1個の光子を固体デバイス上で制御することは大変ですが,究極の量子デバイスを目指しています.
K. Ikushima et al., Appl. Phys. Lett. 104, 052112 (2014).
電気駆動THz光子伝送チップと光子共振チップ |
THz顕微鏡 | 研究室で作製した超高感度なTHz検出器を搭載した顕微鏡を開発しています.この顕微鏡により,2次元電子系におけるサイクロトロン発光の空間分布が明らかにされ,量子輸送デバイスにおける非平衡キャリアの振る舞いが理解されるようになりました.将来的には,半導体デバイスだけでなく,原子層・超伝導およびスピンデバイスや,さらには生体分子の観察にも利用したいと考えています.
K. Ikushima and S. Komiyama, C. R. Physique 11, 444 (2010).
K. Ikushima et al., Phys. Rev. B 76, 165323 (2007).
K. Ikushima et al., Appl. Phys. Lett. 88, 152110 (2006).
K. Ikushima et al., Phys. Rev. Lett. 93, 146804 (2004).
K. Ikushima et al., Rev. Sci. Instrum. 74, 4209 (2003).
量子ホール素子のサイクロトロン発光イメージング |