東京農工大学公式サイト

東京農工大学では、現在の大学のすがた、様々な改革の現況を、志願者やその保護者のみなさん、在学生のみなさん、同窓生のみなさん、そして、地域や連携企業のみなさんに知っていただくため、ビジネスの最前線で活躍されている同窓生と松永是学長との座談会を企画いたしました。
大学の今を説明するだけではなく、どのような大学生活を過ごされたか、企業人として農工大のどのような点に魅力を感じるのかを、同窓生のお二人に率直に語っていただきました。
ぜひご一読ください。

» 座談会参加者の経歴

はじめに

松永学長

本日はお忙しいところお集まりくださいまして、誠にありがとうございます。2004(平成16)年に国立大学が法人化して13年目、2016年度から第3期目の中期目標期間※1を迎えました。本学では、「世界が認知する研究大学へ」との学長ビジョン※2を掲げ、グローバルイノベーション研究院の設置をはじめとして、国際的な大学間競争の中で、これまで以上に積極的な改革を進めています。
そこで、本学の卒業生であり、業界のトップランナーであるお二人から、東京農工大学の現在の取り組みについて、さらには我々が見落としている農工大の魅力からOB・OGならではの苦言まで、ざっくばらんにお話を伺えたらと思います。

長谷川

本日の司会の長谷川です。よろしくお願いします。新聞記者として科学畑が長く、OBではありませんが東京農工大学の先進的な取り組みを以前から注視しておりました。国内外で、イノベーションやものづくりの現場を追いかけてきましたので、本日のお話を楽しみにしております。
では、まず自己紹介を兼ねて、お二人の在学時のこと、現在のお仕事のことをお話しいただけますでしょうか。

能條

私は1973年に工学部の繊維高分子工学科を卒業、新卒でシキボウ(当時:敷島紡績)に入社し、43年になります。
私が大学に入った頃はちょうど東大紛争の年で、農工大も講堂が閉鎖され、1年次の半年間近くは授業がほとんどありませんでした。4年間を通じてグリークラブに在籍していましたが、150人くらいの大所帯でした。その時の組織運営の経験などが、今振り返ると企業人として役に立ったと思います。学業の方は、何とか無事に卒業したという状況です。
私どもの会社は大阪の発祥で、日本の紡績の歴史とともに歩み、今年で設立124年になる老舗です。私が入社した頃は、社員の8割が女性従業員(働きながら通学している)という環境でした。それが今では祖業の紡績は1割にも満たず、繊維関係全体でも売上の半分強です。しかし、織や糸を扱う技術の応用から、製紙用カンバスなどの産業材、食品添加物などの化成品、航空機用の繊維強化プラスチックなどの複合材料と、時代の変化に合わせた商品開発を行い、多様な展開を行っています。

戸所

私は1988年、農学部の蚕糸生物学科を卒業しました。当時、学科の学生数は20名で、男女がちょうど半々でした。農業経営の研究室に属していましたが、今でも当時の仲間とは時々会って親交を深めています。濃縮された友人関係を作ることができた貴重な4年間でした。
卒業後は、同級生たちと同様に研究所勤務を志望し、内定先の食品会社に入社するつもりだったのですが、4年生の8月になって、トリンプ・インターナショナルが新卒を募集していることを知り、急遽応募し、入社することになりました。 というのも、中学生の頃からトリンプのユーザーで、作りや素材の違いに感銘を受けていて、大ファンだったのです。男性にはあまり馴染みのない会社ですが、ドイツの企業で、コルセットを作る会社として1886年に誕生しました。日本進出は東京オリンピックの年、1964年です。
人事部では、初の「理系女子」ということで取り扱いに困惑したようですが、商品企画をやりたいという希望が叶えられ、素材開発とデザインからスタートしました。途中から新分野である知的財産にも関わり、ものづくりから素材、知財も含めて様々な分野を横断する製品開発管理部(現テクニカルイノベーション部)という部署ができた時に部長に選任され、今に至ります。

学長

私も能條会長と同じ頃に学生時代を過ごしました。農工大には、1982年に新設の資源応用化学科の助教授として着任しました。その後、繊維高分子と関係がある製糸学科に移り、製糸学科が高分子工学科に、さらに生命工学科へと改組されました。2011年から学長に選任され今に至ります。

|※1| 国立大学法人化と中期目標

2004(平成16)年、それまで文部科学省の一機関として位置づけられていた国立大学は、国立大学法人という独立した法人格を持つことになりました。これに伴い、それぞれの国立大学が特色ある大学づくりを進めていくために、6年単位の中期目標・中期計画を策定し、それに基づいた大学経営が行われることになりました。

|※2| 第3期中期目標の学長ビジョン

グローバルイノベーション研究院の創設

長谷川

国際競争のただ中におられる企業人として、大学の先端研究力の強化、イノベーティブな人材の育成には非常に高い関心をお持ちだと思います。今年度から発足したグローバルイノベーション研究院について、ご説明いただけますか。

学長

2014(平成26)年に設置したグローバルイノベーション研究機構を改組してスタートしました。 これから地球が持続的に発展するためには、食料とエネルギーの問題を解決しなければなりません。そしてその基礎になるのがライフサイエンス。この「食料」「エネルギー」「ライフサイエンス」の3分野※3 は、まさに東京農工大学が担うべき分野です。これらのテーマに対し、研究特区の制度を活用し、世界トップレベルの外国人研究者をお招きしています。それらの方々に本学のリーダー的な先生方と組んでいただき、若手の先生と研究チームを作っています。2014年に9つの研究チームからはじまり、今では14チームにまで増えています。 それぞれの先生は、国際学会の会長やノーベル賞の審査員を務めておられるような方たちばかりですが、若手の先生方や学生たちにとても気さくに接してくれています。ご家族で滞在いただけるように宿舎の整備も行ったので、キャンパスライフや日本での生活をとても楽しんでくれています。

海外の研究者の招聘
海外の研究者の招聘

戸所

取り組み方が中途半端ではなく、住居の面までサポートし、そこまで一流の先生方にこだわって招聘されたのは素晴らしいと思います。また、人材育成の面からも画期的です。海外の第一線の先生と日本で触れ合い、生の英語に触れて、研究の仕方を直に見ながら学んでいくという経験は、異文化コミュニケーションの面からみても大変効果的だと思います。

能條

これからの理工系の大学では、グローバルな視点を持った人材をいかに育てていくかということが一番大事ですからね。

学長

海外の先生にお越しいただくにあたっては、日本との学期や雇用制度の違いを活かし、「クロスアポイントメント」※4という仕組みで来ていただいています。アメリカの大学は年間9カ月の雇用なので、後の3カ月間は自由にできるのです。

|※3| グローバルイノベーション研究院の研究テーマ

|※4| クロスアポイントメント

研究者が、複数の組織と雇用契約を結び、それぞれの教育・研究活動に従事する仕組みです。
東京農工大学においては、海外の大学における雇用契約が学期中のみに限られることを活用し、世界トップレベルの研究者を、本務校の学期外に招聘する取り組みを行っています。

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