長谷川
グローバル化や若手の育成のほか、女性の活躍推進にもかなり積極的な取り組みをなさっていますね。学内に保育園が2つもあると伺っています。
学長
学内に保育園を持つ大学は増えてきていますが、2つのキャンパスそれぞれに整備しているというのはまだ珍しいかと思います。女性用トイレの完備をはじめ、女性が普通に生活できるようにということで、学内のインフラ整備に力を入れてきました。
また、女性の教員を一定割合で採用するといった取り組みもしています。10年余り取り組んできて、女性の教員も増えてきましたので、最近は周りの大学と連携し、農工大が拠点となっての、女性研究者の研究活動支援事業なども行っているところです。
学部生を見ても、農学部では男女比が半々で、理系の大学ながら、以前から女子学生の大変多い大学です。※7農学や工学の材料関係などは、社会に出ても女性が大いに活躍できる分野だと思います。
長谷川
戸所さんがいらした頃から半分が女性だったそうですね。学生時代と社会に出てからとのギャップはありましたか。
戸所
大学では女性の活躍という言葉すら意識しないほど本当に平等でした。しかし、企業に入ってから、大学院であれば研究室に入った時からが大変だったと思います。私の卒業年はちょうど男女雇用機会均等法施行から2年目の年で、環境が変わり始めた頃でした。
現在は、政府としても積極的にバックアップしていますが、「何割増やしなさい」「女性の管理職を何%に」というのには違和感を覚えます。ある程度の目標は必要ですが、優秀な女性を育てて行くシステム、男女それぞれの意識改革が必要です。その点、農工大はもともと女性の率が高く、間口が広いので、意識の高い女性も多いと思います。研究するにしても学ぶにしても、このように環境を整えることで、今後もより一層女性の活躍が期待できそうですね。
|※7| 女性研究者・女子学生の比率
長谷川
最後に、お二人に大学時代の思い出や社会に出て役に立ったことを踏まえて、現役の学生さん、そして大学へのメッセージをお願いできますでしょうか。
能條
大学時代はそんなに豊かではなく、貧乏学生でしたが、そのなかでもやれることをかなり積極的にやっていたかなと思います。アルバイトをしながら学校に通った記憶が強いですが、クラブ活動も一生懸命やったし、友達を集めて旅行もたくさんしました。そうした大学時代にしかできないことをやってきました。
ただ、企業人になってから英語で苦労しましたので、今の学生さんの環境はうらやましい限りです。ぜひ積極的に大学を活用して欲しいと思います。
戸所
よく学び、よく遊びました。一般教育のときに学んだ統計学や生化学の知識が今に生きていますし、先だって取得した技術士の資格試験の際も、それらの学びのおかげで一次試験をパスできたようなものです。
大学の授業は本当に楽しくて、すべて真面目に出席していましたね。あとやっぱり友人が良かった。農工大を選ぶ人って、いい意味でちょっと変わっているんですよ。今はどうかわかりませんが。
学長
友人が良かったという話は、よく聞きますよ。ぼくらが学生を見ていても、本当にいいやつが多いんですよ。※8
戸所
遊びもするけど、芯は本当にまじめですね。そういう個性のある人達が集まる、本当に魅力的な大学だと思います。ただ残念なことに、卒業して出身大学を話しても、まだまだ知られていない。都内の企業の人事担当者はともかく、地方の人は知らないか、似た名前の大学と間違えてしまう。それがやっぱり残念ですよね。こんなにいい大学で、いい学生もいっぱいいるのに、もう少しアピールできるといいなと思います。
冒頭に学長がテーマとしておっしゃった、食料とエネルギーとライフサイエンス。これらは、人類全体のグローバルな課題として最重要のものです。そして、農工大には、その分野を扱う大学としての役割が十二分にあると思います。そこでの成果を積極的に、グローバルに発信していただきたいと思います。有名かどうかはあとから付いてくるものだと思います。今取り組んでいることがいかに人類に役立つものであるのか、その発信を地道に続けていっていただきたいと思います。
能條
私も同じ意見です。多岐にわたるテーマのすべては網羅できませんが、とにかくニッチな分野でもトップに立つ。大学の規模がそんなに大きくはありませんから、狭い分野でもいいのです。しかし、「ここではトップだ」というところを大いに取り上げていっていただきたいなと思います。私の会社などは、事業内容も外部環境も、私が入社した頃と現在とではまるっきり変わってしまっています。環境変化が速い、半年、一年でトレンドが変わってしまうような時代に、それに素早く対応できるような大学をつくっていただけたらと思います。
学長
ありがとうございます。学生数もそれほど多くないためか、東京という名前が付いているのに知名度が低いことは、学内でもよく話題になります。
しかし、奇抜な取り組みで有名になるのではなく、研究大学として、きちんと研究で有名になっていきたいと私は思っているのです。ですから、お二人が同じ趣旨のことを言ってくださって本当に嬉しいです。
声援にお応えできるようしっかり頑張っていきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。
|※8| 学生の満足度と教育環境