IKUSHIMA GROUP

生体内の非侵襲計測

生体内の形状や異物を非侵襲に可視化する計測技術は,超音波診断,X線検査および核磁気共鳴(NMR)法の応用により,いまやリアルタイム画像,毛細血管まで見える1mm以下の空間分解能や3次元グラフィック化まで可能になっています.しかしながら,生体機能や生体組織の電気・磁気特性を可視化するとなると,その手法は極めて限られてしまいます.たとえば,脳機能イメージングで知られるfMRI(機能的磁気共鳴画像法),近赤外トポグラフィーあるいはPET(ポジトロン断層法)は神経活動そのものである電場や磁場の発生を測定しているわけではなく,血流量や血液中の酸素濃度,代謝量から神経活動の場所を割り出しています.一方,神経活動に伴う直接的な物理量,つまり電場を測る方法としては,脳電図(EEG)や心電図(ECG)が挙げられます.しかしながら,これらは測定電場から逆問題を解いて位置を推測する必要がありますので空間分解測定はあまり期待できません.一方,背景ノイズの少ない磁場を測定する脳磁計は,ニューロン電流によって誘起される磁場を検出するので時間分解能は高く,直接的に神経活動を検知する方法です.しかしながら,やはり体外で測定した磁場をもとに電流発生の向きや位置を逆問題として解く必要がありますので,間接的位置推定となってしまいます.

生体に限らず,物体内部を非破壊に調べることは本質的に多くの技術的制約を伴いますが,生体機能や生体組織の電気・磁気特性の測定となるとさらにその困難さを実感します.たとえば約0.1Vの神経活動電位は,現代の電気測定技術にとって決して小さな電圧ではなく,体内に電極を刺すことが許されるなら容易に測定可能です.しかしながら,体中を絶え間なく伝搬するこの活動電位を非侵襲にそしてリアルタイムに断層画像化することは,映画「アバター」では可能になっていますが現実の世界ではまだ夢物語です.既存の計測手法が改良されれば解決できる問題でもないように思います.これらの問題意識をもった上で,私たちは新しい検査法を測定原理のレベルから追求することが必要だと感じています.

>> 超音波の利点

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