Printed Electronics and Flexible Devices

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ProjectOfHanasakiLab

セルロース・ナノファイバーや導電性インクを操る応用力学

 

世界中の人々の健康にIoTやAIを役立てるためには,スマートフォンのように一人一人にデバイスが必要になります.そして,リトマス試験紙のように手軽に使えてデータが桁違いに集まれば,新たな感染症に的確に対処する手がかりが掴めるかもしれません.同様の革新は,生態系のモニタリングによる環境保全や,食料の生産から販売までのトレーサビリティの飛躍的充実などにも及びます.膨大な数のデバイスをこのように実装する場合,多様な形状や変形に対応できるフレキシブル・デバイスであることも必要です.また,多品種生産にはデジタル設計からインクジェット技術で回路を直接描画するプリンティッド・エレクトロニクスが有効です.そして,製造時の環境負荷が低く,最後のことを考えると生分解性もあれば究極の理想形です.

 

このような究極の条件を満たすデバイスを構成し得る材料として,セルロース・ナノファイバー(CNF)があります.繊維がナノスケールの極細であることから,CNF分散水を乾燥させて作るナノペーパーは緻密な組織構造を持つので,導線をインク描画した際にも普通の紙とは対照的に染み込みにくいという強みもあります.ちなみに,導電性インクを構成する分散媒は水であり,有機分子組成の導電性ナノ粒子もありますので原料は枯渇しません.CNFが素材として開発されて産業界でも広く注目される段階になったので,これからは構造物へ活かす段階に移ってゆきます.CNF分散水からデバイス基板を作製することも,導電性インクを描画して配線を形成することも,流体から固体を生み出す力学現象です.つまり,力学のプロである機械工学が活躍する好機です

 

モノ作りには試行錯誤が必須ですが,試行錯誤のみに依存すると大きな無駄が生じます.用途に合わせたり耐久性を持たせたり,これらを毎回ゼロからやり直すのではなく臨機応変に対応する設計を実現するためは,基礎を踏まえた体系化が必要です.ここで扱う基礎となる力学とは,四力を横断的に扱う統計力学(statistical mechanics)と力学系(dynamical system)です.流体中に漂うナノファイバー群やナノ粒子群のダイナミクスを操るためには,個々のファイバーや粒子が相互作用しながら流動して秩序を構成する仕組みを理解し,サッカーの名将のように個々を踏まえて全体を活かします.そのために当研究室では特に,顕微鏡で獲得した動画データからランダムさの背後に潜む法則性を読み解きます.このような形で,最先端の工学研究にこれらの基礎学問を駆使して科学と技術をつなぐことが,当研究室の大きな特色の一つです.



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