活動報告

2011年12月 FOLENSセミナー :
「持続可能なエネルギー戦略:エネルギーの地産地消へ向けた地方コミュニティーの挑戦」長野県飯田・伊那市訪問(第3回国際シンポジウムエクスカーション)

参加学生レポート:pdfYuya Miyazaki,   pdfPYONE Win Win,   pdfLong Zhao,   pdfMiu_Kamimura pdfCo Thi Kinh,   pdfVo Thi Minh Tam,
                        pdfMudan HOU,  pdfCattleya Chutteang,  pdfKazuhiro AOI,  pdfShaofeng Gong,  pdfYuta Numajiri,
                        pdfRaj Kumar Banjara,

Natural Kitchen TESSHIN おひさま進歩エネルギー株式会社 きのこ培地
Natural Kitchen TESSHINで地元飯田の野菜をつかった美味しい昼食 おひさま進歩エネルギー株式会社 原亮弘社長による「地域からはじめよう!!エネルギーシフト」と題された講義

きのこ培地(廃菌床)を再利用するボイラー(さくらファーム)

温泉の排湯を利用したヒートポンプ 規制の壁を乗り越え保育園の屋根に設置されたソーラーパネル 先生方の環境意識向上やこどもたちへの環境教育等について園長先生より解説

温泉の排湯を利用したヒートポンプ(三宜亭本館)

規制の壁を乗り越え保育園の屋根に設置されたソーラーパネルの前で(飯田市立鼎みつば保育園)

先生方の環境意識向上やこどもたちへの環境教育等について園長先生より解説(飯田市立鼎みつば保育園)

間伐材を利用した木質ペレットの製造・普及木質 市民グループによるマイクロ水力発電実証実験 事業として実用化されている小水力発電
間伐材を利用した木質ペレットの製造・普及木質(南信バイオマス共同組合・南信チップセンター) 市民グループによるマイクロ水力発電実証実験(伊那谷自然エネルギー研究会・長谷中山集落発電所)

事業として実用化されている小水力発電(三峰川電力株式会社 第四発電所)

12月のFOLENSセミナーは、5・6日にかけて、「エネルギーの地産地消」へ向けた地域の取組について学ぶことを目的に、長野県飯田市・伊那市を訪問しました。今回のセミナーは、2・3日に開催されたFOLENS第3回国際シンポジウムのエクスカーションとしても位置付けられ、海外教育・研究拠点大学や協力大学の教員(ガーナ大学John Ofosu-Anim先生、ベトナム・カントー大学Le Viet Dung先生、中国環境科学研究院Hou Hong先生、タイ・カセサート大学Tiwa Pakoktom先生、ガーナ・クワメンクルマ科学技術大学Samuel Nii Odai先生)や、パネリストとして登壇いただいた「人と農・自然をつなぐ会」の杵塚歩氏にもご参加いただき、学生21名(うちFOLENS履修生19名)、本学教員5名と合わせ、計32名が参加しました。

実習は、4・5月のセミナーで、3月11日の東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故の衝撃のなか、今年のセミナーでとりあげるべきテーマを話し合った際、「エネルギー」に最も高い関心が集まったことから計画されました。今後のエネルギー戦略の上で大きな鍵となる「地産地消」へ向けた取組を進める地域を訪問し、人々の話を聞き、再生可能エネルギーの導入実践を見学して、その思想や戦略、技術と制度等、様々な観点から、その可能性と課題を考えることを目指しました。

1日目:
バスの中、まず初めに、多様な専攻・出身国から集まる学生や教員の全員が「今回の実習で学びたいこと」を発表。「自国にない実践を見たい」「人々の中にあるパワーについて学びたい」「バイオマスについて知りたい」「地域の中でエネルギーをまわす方法について学び、自国で適用可能か考えたい」「補助金なしでは成り立たないイメージのある自然エネルギーが、本当に実用可能なのか知りたい」といった声が聞かれました。続くバス内ミニレクチャーでは、まず特別ゲストの降旗先生より、公民館活動を中心とした社会教育が盛んなことで知られる飯田市の背景について解説がありました。「環境文化都市」づくりに積極的に取り組む飯田市。この土台には、社会教育を通じた市民力の形成があります。また、FOLENS下ヶ橋先生からはエネルギーの基本に関して、さらにFOLENS学生の宮崎さんより、再生可能エネルギーとして注目されるバイオマスについて、趙さんより、省エネルギー技術ヒートポンプについて、説明がありました。

飯田に到着し、初めの訪問先は、地域のエネルギーシフトを市民・行政等との協働で推進する「おひさま進歩エネルギー」。代表取締役 原亮弘氏による講義は、「地域からはじめよう!エネルギーシフト~市民の意志あるお金で取り組む自然エネルギーの普及促進」と題され、市民ファンドを用いた革新的な仕組みやそこに至る道筋と成果についてわかりやすくご説明いただき、また地域や社会全体の未来を見据えての展望を「望む未来を選びとる」ことの重要性とともにお伝えいただきました。市民ファンドとは、一般の人々から出資を募り、それを元手にソーラーパネル等の発電・省エネ設備を設置することで使用者による初期費用の負担をなくし、資金はそこで発電した電力使用への課金で回収するという仕組みです。講義の後は、ソーラー技術、売電の仕組み、市民ファンドの広報や普及、補助金なしでの事業実施の可能性、原社長ご自身の社会教育活動について等、様々な質問が、予定時刻を過ぎても次々と続きました。その後、事務所内に取り入れられた省エネ技術を見学しました。

続いて、おひさま進歩エネルギー谷口氏・インターンの清川氏・古山氏に同行いただき、同社の事業による自然エネルギー・省エネルギー化の現場を訪問しました。まず、きのこを栽培する(有)さくらファームで、従来の石油に代わり培地(廃菌床)を燃料として再利用するボイラーを見学。導入を決断した桜井社長より、その思いと成果、苦労や課題をお伺いしました。さらに、温泉旅館の三宜亭本館では、温泉排湯を利用したヒートポンプと廃材を燃料とするボイラーについて、児島社長に解説していただきました。その夜はここに宿泊し、留学生にとっては日本の温泉旅館を体験する絶好の機会となりました。

2日目:
翌朝、再び谷口氏・清川氏・古山氏に同行いただいて、飯田市立鼎みつば保育園を訪問。飯田市では、公的施設の屋根に民間企業(おひさま進歩エネルギー)がソーラーパネルを設置し売買電契約を結ぶという取組が、市行政の柔軟な対応により実現しています。園長先生からは、市の「環境文化都市」へ向けた取組の中での園職員の意識改革や、パネル設置後のこどもたちへの環境教育、そしてその家族の意識の高まりについてもお伺いしました。

この後は、おひさま進歩エネルギーによる事業からは離れ、まず同じ飯田市内で、間伐材を利用する木質ペレットの製造・普及に取り組む地元企業5社が設立した南信バイオマス共同組合を訪問しました。理事長の南信チップセンター井口肇社長より、実際のペレット製造現場を見せていただきながら、山や自然環境に対する思いと、ペレット製造販売事業化へ向けたご苦労と成果、今後の展望についてお伺いすることができました。留学生らからは、森林の所有権・伐採権や植林等の森林管理方法に関する質問があり、間伐材活用による林業の活性化と森林の健全化が求められる日本と、森林の過伐採による荒廃が問題となっている地域との状況の違いも浮かび上がりました。

午後からは伊那市に移動し、まず、伊那谷自然エネルギー研究会がマイクロ水力発電設備の実証実験を行っている長谷中山集落発電所を訪問しました。地元で燃料会社を経営しながら活動される研究会の小澤陽一氏より、設置の背景や目的、設備の詳細をご説明いただき、さらに水路の清掃等日々の管理を担う長谷支所長の中山昌計氏より、管理方法等について実演いただきました。設備はベトナムから輸入されたもので、東南アジアの山岳部では同様の水力発電設備が広く活用されているという留学生や海外拠点教員の話を、日本人学生らは興味深く聞いていました。

実習最後の訪問地は、三峰川電力株式会社の小水力発電施設である第四発電所です。当日は年に一度の点検中で機器は停止していましたが、兼子課長より設備や事業の概要を解説していだき、実際に機器を間近に見せていただきました。私企業による収益事業として既に実用化されている小水力発電ということで、今後こうした事業が普及していくだろうという展望に、発電設備の開発需要が今後続くであろうアジア・アフリカ地域の留学生や教員も、高い関心を持った様子でした。

バスに乗り込み、全員が順番に「今回の実習で学んだこと、印象に残ったこと」を一言。「自分の専門分野とは全く異なる新しい知識を得た」「多様なアイディアと技術について学んだ」というエネルギーに関する知識や技術面での学び、「行政と住民の意識の高さが印象的」「必要な知識が、技術者だけではなく地域の人々にも共有されていることがすばらしい」「地域の人々の責任感、やる気に感銘を受けた、政府ではなく私たちが変化を起こさなければならない」という地域の力への気づき、「自分の故郷にはほとんど電力がない、日本にはこれだけの自然資源があって幸運だ」「自然エネルギーを自国でどう活用できるか考えたい」「自国の政策決定者にこうした事例について紹介したい」「自分の故郷について改めて考える機会となった」という自国との比較や自国・出身地域での適用についての考え等が聞かれました。

全体を通じて、エネルギー問題、そして社会のあらゆる問題に対する取組には、技術やお金ばかりではなく、地域の力、リーダーの力、「とにかくやってみよう」という意志や情熱と実際に事業を進める知恵と協力が必要だということ、またそれがあれば誰もが、地域から、草の根から、大きな事を成し遂げられるということを、学ばせていただいたと感じています。

なお、訪問先の決定については、11月の事前セミナーで講義をしてくださった環境政策エネルギー研究所(ISEP)主任研究員の山下紀明氏より、大変貴重なアドバイスをいただきました。(SN)

プログラム:
12月5日(月)
7:15

工大府中キャンパス集合
バス出発
オリエンテーション:二ノ宮リムさち(環境リーダー育成センター)
一言自己紹介「この実習で学びたいこと」:全員
バス内レクチャー&プレゼンテーション
①持続可能な都市としての飯田とその市民力形成:降旗信一(農学研究院 准教授)
②エネルギーとは何か:下ヶ橋雅樹(環境リーダー育成センター 准教授)
③バイオマスの活用:宮崎雄矢(FOLENS学生)
④ヒートポンプとは何か:趙龍(FOLENS学生)

11:30 長野県飯田市到着
昼食(Natural Kitchen TESSHIN)
13:00

おひさま進歩エネルギー株式会社(地域におけるエネルギーシフトを市民・行政等との協働で推進)
原 亮弘社長による講義

14:30 質疑応答
15:00 おひさま進歩エネルギーにおける省エネの取組を見学
15:30 移動
16:00 さくらファーム見学(きのこ培地再利用ボイラー)
17:30 三宜亭本館(旅館)見学(排湯利用ヒートポンプ、廃材等利用ボイラー)
19:00 夕食~宿泊
 
12月6日(火)
  朝食・チェックアウト(各自)
8:30 ロビー集合
9:00 飯田市立鼎みつば保育園見学(公的施設へのソーラーパネル設置)
10:00 南信バイオマス共同組合見学(地元企業5社の共同組合による間伐材を利用した木質ペレットの製造・普及)           井口潤子氏
11:00 移動
12:00

長野県伊那市到着
昼食(道の駅南アルプスむら「野のもの」)

13:30 伊那谷自然エネルギー研究会・長谷中山集落発電所見学(市民グループによるマイクロ水力発電)小澤陽一氏
14:30 三峰川電力発電所見学(企業による小水力発電)
16:00 出発
19:00 農工大府中キャンパス到着
 

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