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わたしの講義(FOLENS E-News No.2/ 2011年6月):水・排水処理工学

大学院工学研究院応用化学部門 寺田昭彦、細見正明

 本講義では、「水」を処理するための技術に関する講義・演習を展開しています。21世紀は「水の世紀」と言われており、水資源の有用利用・排水の処理技術の重要性は高まっています。特に、これまでの「明らかに目に見える」問題(例えば、臭い、濁っている等)に加え、「現時点では目に見えないが危険性をはらんだ」問題(例えば、医薬品の水圏への流出による薬剤耐性微生物の出現等)も顕在化しつつあり、複合化の一途をたどっています。このような現状を鑑みると、今まで以上に様々な技術・学問を融合した学際的アプローチが必要不可欠です。
一概に水処理技術といっても、物理・化学・生物処理を集約しており、水処理技術の理解には基となる分離、凝集、混合、反応、移動現象などの単位操作を理解することが必要です。本講義では、これらの単位操作を説明し、物理学・化学・生物学的水処理技術としてどのように利用されているかを紹介しています。
次に、水処理技術の中で特に制御が難しい生物処理の理解や予測のために、微生物の動力学や化学量論について講義し、有機物・栄養塩(窒素・リン)の除去メカニズムと処理プロセスについて紹介しています。生物処理プロセスを予測・制御するために、コンピュータシミュレーションは非常に強力なツールになっています。本講義では、微生物の動力学や化学量論に基づいた数式モデルを履修生に構築させ、実際の下水処理場の生物反応槽の性能をシミュレートすることを目標としています。これにより、水処理技術で中心となる生物処理の原理や性能を左右する制御因子について理解を深めてもらいます。
さらに、課外活動として水処理場の見学を行います。現場を実際に見ることにより、これまで講義・演習で培った知識を深化させることができます。水・排水処理が様々な技術を統合して行われていることを実際に体感してもらいたいと考えています。
水・排水処理技術は、基本的にはモノを生産する技術ではありません。したがっていかに初期・動力コストを落とすかが重要なポイントです。また、発展途上国においては、適用できる技術は限られていますし、依頼主の経済状況、地域の気候、近隣の住民の意見、達成すべき規制値、作業員の労働感等も考慮する必要があります。水処理プロセスの施工は技術のみを集約すればよいわけではなく、上記のような現場に立脚した統合的なアプローチが必要不可欠であることを受講者に意識してもらうように、講義を進めています。

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