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わたしの講義(FOLENS E-News No.1/ 2010年9月):流域の視点を学ぶ:地域環境保全計画学

国際環境農学専攻 准教授 五味高志

E-mail: gomit(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp
Web: http://www.tuat.ac.jp/~gomit/

 本授業は地域環境保全計画学と題されていますが、地域の環境保全や計画に重要となる水土保全と流域管理を主な講義内容としています。受講生は、水文学や生物地球化学などの学生のみならず、生物系や人文社会系の学生も受講しています。水や土壌の保全を目的とした流域管理や保全計画では、水文学、地形学、砂防学の基礎知識のみならず、生態学・作物管理・地域計画・政策学など幅広い知識が必要になることから、受講生が多様であることは講義を進めることや、学生間の意見交換においても有効であると考えています。

 講義内容は大きく(a)流域プロセスに関する基礎知識と(b)流域管理のフレームワークの2部で構成されています。前半では、水土保全や流域管理に重要となる、斜面や河川における水文プロセス、土壌侵食のメカニズムとその対策、豪雨や洪水および崩壊・土石流の発生メカニズムとその対策などの基礎を学びます。講義では特に、資源管理や土地利用と関連がある水文・地形・生物プロセスの相互について強調しています。受講生は毎回の講義で課題に取り組みます。また、水文プロセスは土壌表面や土壌中の現象であり、実際に起こる現象をイメージし、理解することは難しいことから、簡易な室内実験により現象の理解なども進めています。

 講義の後半では、流域管理に関するフレームワークを学び、特定の流域を対象とした流域管理について実践します。専門の異なる受講生から構成されるグループにより、流域の環境や資源管理の問題、今後の流域管理の方向性につい情報を収集しながら議論します。各自の専門性を生かし、(1)流域における農業・環境や資源管理に関する問題とその発生箇所の抽出、(2)既存のデータによる問題の定量的・定性的評価、(3)データ精度の検証、(4)流域環境保全や資源管理の将来あるべき姿の考察、(5)将来への流域管理の提案といった流れの中で、流域資源管理や保全計画の実際について学びます。グループ討論では、各自の専門分野のみならず、他の専門分野や地域(もちろん国際的な地域)での視点も理解し、流域管理に取り組みます。

実際の流域管理では、様々な意見や資源を巡る利害関係を調整しつつ、リーダーシップをとって、流域管理や資源管理、中長期的な保全計画の方向性を見出してく必要があります。国際河川においては、問題はさらに複雑化することでしょう。履修を終えて、基礎知識の蓄積のみならず、如何に混沌とした意見を理解しつつ調整し、まとめていくかの技術が少しでも身につけばいいかと思います。

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