研究室教育 重金属汚染に立ち向かい、自然を守りたい 農学部 環境資源科学科 渡邉研究室

イタイイタイ病や水俣病をご存じでしょうか。カドミウムや水銀など、体内にしつこく残留してしまう重金属が要因となった、日本の高度成長期における重大な公害です。そして今、世界中で同じような公害が発生しており、特に途上国での重金属汚染は深刻です。

また、忘れてならないのは日本にも依然として土壌汚染があるということ。匂いも味もなく、もちろん目にも見えない六価クロムが高い数値で検出される地域もあれば、福島第一原子力発電所の事故によって、放射性セシウム汚染も広がりました。さらに、各地の空港周辺の土にも、航空機由来の燃料などがもたらす汚染が発生しています。

研究室では、さまざまな汚染が進行するこれらの現場に足を運び、汚染された土や生物などを採取・解析。必要があれば地域住民に警告を出すことも使命だと考えています。調査・分析とともに、重金属を蓄積できるハイパーアキュームレーターと呼ばれる植物の力を借りた「ファイトレメディエーション」という浄化技術の検証実験も行っています。これらの研究活動を支えるのは、重金属の超微量な存在を超高感度で検出・分析できる「ICP-MS」という最新鋭機器や、魚類から哺乳類まで世界中の生物系試料を保存する「スペシメンバンク」など。充実の設備も学生のモチベーションを高める要因となっています。

日本国内では、目に見える大気汚染が軽減されたこともあり、社会の意識・興味は下降傾向にあります。そんな中、集まってくれたのは、汚染解消による美しい環境づくりを目指そうとする意識の高い学生たち。それは、シンプルに言えば自然界、そして人類への「思いやり」です。卒業生の進路は、研究者や、環境行政に携わる公務員などさまざまですが、それぞれの立場で自然破壊への危惧を持ち、草の根からでも行動し、社会に発信していってほしいと願っています。

東南アジアで水環境の汚染実態を調査するため、現地の大学や熊本大学などとの共同で、海水や底泥のサンプリングを行いました。
渡邉 泉 准教授

農学研究院
物質循環環境科学部門
渡邉 泉 准教授

愛媛大学連合農学研究科生物環境保全学専攻 博士課程修了。
専門分野は環境化学、環境毒性学。
『重金属のはなし』(中央公論新社)など著書多数。

Student's Voice

稲餅 梨瑚さん

農学部 環境資源科学科 4年
稲餅 梨瑚さん

新潟県立新潟高校出身
研究テーマは「道路粉塵中セシウムの河川流入の実態」。福島県二本松市で採取したサンプルの分析をしています。現地の方のためにも、しっかりと成果をフィードバックしたいですね。

斎藤 侃さん

農学部 環境資源科学科 4年
斎藤 侃さん

私立帝京大学高校出身
東北水産研究所との共同研究で、サンマの体内の微量元素濃度から生態情報を解明する研究をしています。直近の目標は国際学会での発表。そのためにTOEICR対策にも力を入れています。

池田 桃恵さん

農学部 環境資源科学科 4年
池田 桃恵さん

埼玉県立川越女子高校出身
東京都東部の埋め立て地における六価クロム汚染を研究しています。これから先、国内外で進められていく埋め立て事業に自分の研究成果を活かしていければと思っています。

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