はじめに
当研究室の特色は,ディスカッションの多さです.教員,先輩,後輩分け隔てなく活発に議論を行い,海外からの訪問研究者とも論議を交わす機会が頻繁にあります.他者からの新しい考え方を柔軟に取り入れながら研究を進めるスタイルで,知的な刺激にあふれています.
人との議論を好まないタイプの方には向かないかもしれませんので,ぜひ事前に研究室見学をして,自分に合っているかを確かめてください.田川教授は時間があればアポなしでも研究室見学に応じます.
段階的プログラムの具体例
当研究室の「段階的プログラム」を具体的に示しますので,学生生活のイメージに役立ててください.
ただしこれはあくまで標準的な目安となるものであり,学生の個性,潜在能力,得意分野を最大限引き出せるように,教員が密に面談(定期的な面談は年4回以上,各1時間程度)を実施して,一人一人プログラムをカスタマイズしていきます.
また特に博士課程は,相当多岐に渡り標準的なプログラムを示すのは困難なため,ある1モデルケースを記載しています.
学部4年 |
4〜7月 | "Praktikum"(ドイツ式の実践的研究トレーニング)や,テクニカルライティングおよびプレゼンテーションについての講義・演習で研究実施力や発表力を養います. また研究内容について,学生主体の議論の場を頻繁に設け,先輩,後輩分け隔てなく活発に意見交換を行います. |
9月 | 文章力や学術論文レビューの際に必要な力を養うため,卒論中間発表要旨について,Internal review(*1)を行います. | |
11月 | 研究成果が出た学生は,国際学会(APS/DFD)に参加します.学部生ながらポスター賞を受賞した学生もいます(2023年5月現在,3名). | |
修士1年 | 4〜7月 | 研究企画力を身につけるために研究企画書を作成し,プロポーザル(研究提案)プレゼンを行い,互いに評定基準に則り評価します.将来,研究資金を獲得する際に必要な力が養われます. |
9〜3月 | 実験,測定,解析に取り組む一方,国内外での学会発表,学術論文執筆,海外短期留学,さらに努力次第では国際学術雑誌への投稿や,特許取得の機会もあります.また海外からの招聘者等,外部向けに自分の研究の説明を英語等で行う機会が増えます. | |
修士2年 | 4〜7月 | 修士1年で作成した研究企画書のレビューや,学術論文の執筆を行います. 就職活動を行います(過去の学生の就職先はこちら). |
5月 | 博士進学を希望する学生は研究資金獲得のためのプロジェクト等に応募します(修士短期修了を目指す場合は修士1年の5月頃に行います)(*2). | |
9〜3月 | 学術論文の執筆を行います.学部4年からの3年間で,学術論文1本を仕上げることが目標です. | |
博士1年 | 4〜11月 | 国際共同プロジェクトを成功させる力を養うため,博士課程3年間の研究内容を教員と協議し,夏から秋に開催される国際学会や,査読付きの国際会議などで成果を試します.短期・長期留学を計画する学生もいます. |
12〜3月 | 学会発表を元に,国際学術雑誌への投稿論文を執筆します.またプレスリリースや解説記事によるアウトリーチ活動を行い,企業との関係も構築していきます. | |
博士2年 | 4〜8月 | 1年目の研究成果を元に計画を見直し,成果を国内外の学会で発表します.また1年目の投稿論文の改訂作業と審査員(査読者)とのやりとりを行います. 自分の専門分野外の研究者と協働し,学際的なプロジェクトを開始します. |
9〜11月 | 2年目の研究成果を投稿論文としてまとめるとともに,国際学会で発表し議論することで,博士論文の構成が固まってきます. | |
12〜2月 | 投稿論文について査読者とやりとりしたり,国際共同研究を行い活発に議論を交わすことで,博士研究をよりブラッシュアップします. | |
博士3年 | 3〜5月 | 就職活動を行います(過去の学生の就職先はこちら). |
6〜7月 |
博士論文の骨子を教員と決定します.産学共同の研究費の獲得を目指す場合,研究の実用化や製品化などを見据えたものづくりを学ぶことができます. | |
8〜10月 | 博士論文執筆に専念します.留学経験がある場合は国際共著論文を執筆し,留学の成果を世界に発信します. | |
11〜3月 | 博士論文の一次審査(予備審査)及び最終審査(公聴会)が実施されます. 博士課程全体を通して,Internal review,修士学生のメンター,実験指導等,複数のプロジェクトにおいて重要な役割を担うことで,自立した研究者としてのマネジメント力を培います. |
*1 Internal review; 研究室内メンバーから自分の書いた内容について書面で質問を受け,それに回答する活動です.
*2 プロジェクト等から一定期間研究費用を支援してもらうことで,より幅広い研究活動を行うことが可能になります.
流体 の 実験 が 数多くできる!
日本で数台しかない高速度カメラが充実しているため,流体画像解析の実験環境が整っています.ハイスピードの現象をカメラでとらえることで,知られざる流体の仕組み,現象,原理を明らかにする可能性を秘めています.また,実験ではこれらの装置を使用して自由に環境を組み立てることができるので,自分で色々なやり方を数多く試せることも魅力です.
学術的に難しい数式ではありますが,美しい流線型の運動を描くため,機能美に迫れ,単純に目で見て美しく楽しい画像が撮れます(高速度カメラで撮った画像集はこちら).
下の「粘い液体ジェットが操れる」という画像は,流体の原理の解明がものづくりにつながっている一例です.ものづくりについては次の項目で記しますが,流体実験のその先にものづくりが待っているのです.
グローバル な 力試し が できる!
VISIONページでも紹介しておりますが,当研究室の特色の一つに「グローバル」が挙げられます.
研究室から学生を海外に派遣する場合,一般的な海外研修や留学のように学生として教わる立場というよりも,一人前の研究者として共同研究を行うことが目的となります.ここで言う力試しとは,こちらの技術やアイデアをベースに,派遣先の環境や技術を借りて研究を行うことを指しています.
また一方で,海外から研究者を招いた際に,英語で自分の研究について説明する場面も多いため,海外に行かなくても研究室内でグローバルな力試しをする機会もたくさん用意されています.
さらには,学生が海外の学会で発表する機会も多く,これまで多数の先輩学生たちが国際学会で受賞しています.
(受賞の様子はこちら)
メリハリ のある 研究生活 が 送れる!
当研究室は,平日9時から17時(コロナ感染症対策のため現在(2020年9月15日)は平日9時半から16時半)に研究活動を行います.夏休みは一ヶ月以上,冬休みはクリスマス前から設定されます.学生のうちから,社会人とほぼ同じ生活リズムを身体に染み込ませること,そして限られた時間をどのように研究に充てるか学生自身が考え,スケジュール管理を行うことが目標です.
この活動時間内は,求められるスピードも成果もけっして楽なものではありません.その代わり,活動の合間に研究室でスポーツ観戦に行ったり,スポーツで体を動かしたりと,遊ぶときはとことん遊びます.
質の良い睡眠,食事,運動を心がけることが,ひいては質の良い研究活動につながります.
安心 して 研究 に 没頭できる研究環境 が 整っている!
研究室は,知的な自立をトレーニングし,成長(=今の自分から変化)する場所であるため,決して居心地が良いばかりではありません.「今の自分ではいけない,成長して新たな自信を付けたい」と求める状態は,心身の消耗が激しく,居心地の良さが一部犠牲になるためです.しかし一方で,「今の自分のままでいたい,失敗が怖い,変化が嫌だ」という相反する気持ちを抱くことも自然なことです.車で例えると,アクセルとブレーキのように,一方に偏ると暴走するか一歩も動けなくなってしまうため,どちらも重要で,バランス良く両方機能することで上手に進んで行きます.
失敗を恐れてうまくやろうと自分にプレッシャーをかけ過ぎたり,隣の人と比べたりと,誤ったアクセルの踏み方が過度なストレスになり得ます.特に,研究とは「誰も知らないことを明らかにする行為」であるが故に,「必ずできなければいけないこと」と捉えてしまうと危険です.「できるかどうか分からないことを探究しているため,研究した結果,できないこともある」と適正に捉えることが重要です.
アクセルとブレーキのバランスが崩れたとき,精神的負荷がかかり,心の病につながるケースも少なくありません.当研究室では,そうした不調を予防し,安心して研究に没頭できる研究環境づくりを心掛けています.活動時間を17時までとしていること,長期休暇を設けていること(詳細はこちら(本ページ内「メリハリのある研究生活が送れる!」参照))も,その取り組みの一つですが,さらに2020年度より,定期的な面談と休息を徹底するために,7週間の研究活動と1週間の面談期間を設けることにしました.この期間中は,個別面談以外の時間は完全フリーとなります.平日9時〜17時に研究に没頭し,17時以降は休息にあてる生活を7週間続け,1週間は体と脳を休ませる,というサイクルです.
もちろん,万が一心の病等にかかった場合は相応の対処を行いますので,少しでも不調を感じたら教員に相談してください.
適正に「研究」の意味を捉え,安心して研究活動を行えるよう,今後も環境整備を徹底していきます.
授業料免除・奨学金などについて (※2020年8月現在.変更の可能性有り)
学部卒業後に大学院を目指す学生には,授業料免除や奨学金などの経済支援が制度化されています.
授業料免除プログラムは農工大で5名程度の少数枠ですが,当研究室からこれまで複数名を輩出しており,修士1年生から博士3年生までの5年間の授業料がほぼ全額免除になった先輩もいます.
奨学金制度もあり,日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は学業成績優秀者に対し返還免除となるプログラムも用意されています.研究成果をベースに奨学金免除の被推薦者選抜が行われ,2020年度時点で当研究室から5名以上が奨学金の全額返済免除を受けています.
また博士(後期)課程では,日本学術振興会の特別研究員制度の募集があり(当研究室の過去の実績は,応募者全員が合格しています),返済不要な奨学金や研究費の支援により,修士課程よりも自由で踏み込んだ研究を自分の裁量で行うことが可能になります.
こうした支援獲得には,英語の学術論文を書く,国際学会で複数回発表するなど不断の努力が必要ですが,頑張りが認められれば経済的な心配をすることなく,科学研究者への道が開かれていますので,その点が心配だからと諦めないでもらいたいと切に願っています.
必要な知識について
・流体力学の基礎
・数学
・物理
・英語