東京農工大学大学院農学府 環境資源物質科学専攻 資源機能制御学研究分野
 
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研究テーマ(2008年現在)

 本研究室が近年取り組んでいる研究テーマについて、いくつか簡単に紹介します。


 【リサイクルパルプを配合した紙保存資料の劣化評価とその改善処理】





 再生紙使用による紙保存資料の劣化についてはその歴史が浅いこともあり、まだ評価すら定まっていない。高温・高湿度による加速劣化処理あるいはリサイクル処理による機械パルプの変質は化学パルプに比べて小さいにもかかわらず、日常的な判定から判断すると機械パルプ含有紙の経時的変質は大きい。したがって、印刷・情報用紙への機械パルプの多量の配合は紙保存資料の経年変化に悪影響を及ぼすことが十分予測される。この研究テーマでは、リサイクルパルプ、特にリサイクル機械パルプを配合した紙の経時的劣化に伴う変質を実験的に再現し、種々の劣化評価法を用いて評価するとともに、リサイクル機械パルプによる紙の経時的変質を抑制できる改質処理の開発を目的としている。



 
 【脆弱化した図書・文書資料の非破壊劣化度評価と新規強化処理法の開発】






 19世紀半ば以降に作られた図書や紙試料のほとんどは酸性紙が用いられており、劣化の進行が著しい。特に19世紀半ばから20世紀初頭にかけて発行された図書にはすでに閲覧不能になっているものも多い。酸性紙の劣化を抑制する目的で、紙のpHを上昇させる種々の大量脱酸性化処理が世界各地で考案、実施されてきた。







本研究室が考案し、日本で実用化されたドライ・アンモニア・酸化エチレン法もその一つである。しかしながら、すでに脆弱化している紙に脱酸性化処理を施すことによって紙の劣化が抑制されても、紙の強度が向上することはないため、閲覧可能になるわけではない。したがって、すでに脆弱した紙には強化処理を行うことが先決となる。

 この研究テーマでは、紙を厚さ方向に2層に分離した後、層間に薄葉紙を挿入することによって強化するペーパー・スプリット処理を施す装置を試作し、その補強効果を検討している。




 また、劣化した図書や紙資料には脱酸性化処理や強化処理を施す必要があるが、処理の必要性を把握するためには、対象となる図書や紙資料の劣化度評価が不可欠である。測定に供する紙資料の大きさ及び損傷を最小限に止めながら、低水準にある劣化した紙資料の強度を精度よく測定する方法としてアコースティック・エミッションを用いた紙の劣化度測定法を開発している。さらに、定量的官能評価法として紙資料をアクリル樹脂製のロール棒を用いて端から丸めて評価するローリング・テストについて併せて検討している。


 
 【紙の密度コントロールによるパルプ繊維の有効利用と製紙特性の変化】





 省資源、省エネルギーなどの観点から、軽量で従来の品質を維持した低密度紙の需要が伸びている。この研究テーマでは、低密度調整剤の添加、抄紙条件、乾燥条件の違いによって変化する紙の低密度化効果を、紙の物理的性質、空隙構造及びぬれ性の観点から検討している。





 
 【ペーパースラッジ炭化物の調製と塩化水素ガスの捕捉効果】






 
紙の製造時に多量に排出される廃棄物であるペーパー・スラッジの再利用を目的として、低酸素状態でその炭化物を調製し、その吸着特性を検討している。特に、ペーパー・スラッジの炭化物を調製する際に生成されるカルシウム化合物に着目し、ポリ塩化ビニル燃焼時に発生する塩化水素ガスの捕捉効果について測定している。その結果、500℃で生成した炭化物による塩化水素ガスの除去率が3050%であったのに対して、800℃で生成した炭化物では塩化水素ガス除去率が向上し、95%に達するものを調製することができた。さらに、これが高温処理によって変化するペーパー・スラッジ中に多量に含まれる炭酸カルシウムに起因していることを明らかにした。



           


 
 【再生紙における古紙パルプの識別と定量法】





 森林資源の保護、紙ごみの削減など環境保全の観点から、製紙原料への古紙利用率が増加し、エコマークなど環境対応製品の一つとして再生紙が広く普及するようになると、用紙や紙製品の中の古紙パルプ配合率の評価が必要となる。ところが、古紙の種類は極めて多岐にわたる上、古紙処理の過程でパルプ繊維が物理的あるいは化学的変質を受けているため、古紙のパルプ繊維を識別することは容易ではない。したがって、これまで、信頼性の高い紙中古紙パルプ含有率の試験方法は見当たらず、公的な試験法も制定されていない。




 本研究室では、TBSと共同で再生紙年賀はがき及び再生コピー用紙の古紙パルプ配合率の測定に取り組み、20081月にTBSにて報道されたような「再生紙偽装」を突き止めることに成功した。今回の「再生紙偽装」で古紙パルプ配合率を推測するためにいろいろな分析方法を試してみたが、最終的に判断材料となったのは、流通ルートから推定される古紙の種類、繊維組成試験、蛍光顕微鏡による蛍光染料付着繊維量の測定、UVランプ照射による蛍光観察などである。



 さらに、研究テーマとしてデキストランを用いたリサイクルパルプ繊維構造の評価を検討している。これは、化学パルプ繊維が湿潤、脱水、乾燥の繰返し処理を受けるときにパルプ繊維細胞壁の細孔容積が減少するという特性を利用して、染色されたデキストランをパルプ繊維細胞壁中に充填させて画像解析を用いて定量化しようとするものである。




 
 
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