小型の天体探査システム,移動探査ローバの研究を行っています. 特に,車輪移動にとらわれない,新たな移動形式のローバの代表として, ホッピングローバ(あるいは跳躍ロボット/跳躍ローバ)の研究を行っています.
LEV (Lunar Excursion Vehicle) 跳躍ロボット技術を応用した月探査ローバJAXA記者会見アーカイブ(Youtube)
宇宙探査イノベーションハブ事業における不整地調査用跳躍ロボット リンク
レゴリス(天体表面の砂)で覆われた天体表面を移動するためには, 砂の特性について知る必要があります. どのような力が,砂からローバに作用するかを知ることで, より効率よく,より長距離を移動できるローバを開発可能になります. 砂の抵抗力や反発力を様々な条件で測定し, ローバのシミュレーションや設計に使用できるようなモデル化を進めています. 真空装置の中や,飛行機を用いた微小重力(パラボリックフライト)を用いて実験を行っています. また,砂の種類としては,様々な粒径の珪砂や,火星・月のレゴリスシミュラントを用いています.
小型ローバを複数用いて,広範囲で同時に探査する手法を検討しています. 月面・火星の放射線環境や地下構造計測などの分野で, 複数ローバを展開して観測範囲を広げることで, 短時間に,ロバストに,広範囲を探査することが可能になると考えています. また,地下構造探査では,分散範囲が広くなるほど精度向上が期待できるので, 天体上での資源探査などへの応用を検討しています.
天体表面に道はありません.だからと言ってすべてが凸凹ではなく, もちろん,ある程度平坦な地形は存在します. しかし,今だ踏破されていない急峻な地形にこそ新たな知見があるかもしれません. ローバ,特に中小型を対象として,車輪の形状や, その制御方法を工夫して,踏破性能を向上させる試みを行っています.
重力天体への着陸に際しては,天体表面の凹凸や探査機自身の残留速度の影響で転倒する可能性があります. 特に急峻地形への着陸では転倒リスクが顕著となります. 着陸脚の性能の向上や,機体構造の特性の積極的な利用により,転倒や姿勢の乱れを抑制することが可能になります. これらの検討結果を,火星衛星への着陸計画(MMX)や次期月着陸計画(SLIM)に貢献できるように議論を行っています. また,さらに先の研究として,着陸脚の緩衝機構を制御することで,事前情報の無い凹凸・傾斜上や, 残留水平速度を有していても転倒せず着陸可能にする技術も検討しています.