東京農工大学 農業経済学研究室

教授  山崎 亮一 YAMAZAKI Ryoichi

言葉

私が今取り組んでいること

「食」をめぐる環境は深刻になってきました。量的側面をみれば飽食と飢餓のアンバランスを 生み、また質的側面では豊かさの裏側で生命基盤を破壊してきました。

先進国では飽食・肥満からか多くの人々がダイエットに励み、他方、途上国では8億以上の人々が今も飢えに苦しんでいます。 食品添加物や農薬など人間が創り出した化学物質は、生活や生産を便利・効率的にした反面、生命や健康、そして生態系を脅かしています。

農業も第二次世界大戦後大きく変化し、深刻さを増しています。 我が国に着目してみれば、とくに1960年代以降の高度経済成長期から今日にかけて、効率主義・市場原理主義に貫かれた農業の近代化が急速に進みました。 貿易体制もこの延長線上に構築されてきました。 この過程で農業基盤も食生活も、世界に類をみない大変貌を遂げました。

基盤整備事業の実施や化学資材の多投等により飛躍的に生産性が向上した反面、ドジョウもフナも、そしてトンボもめっきり姿を消し、農村の原風景を失いつつあります。 この過程で農業構造も大きく変化し、兼業農家や土地持ち非農家が農村社会で多数を占めるようになってきました。

また、食生活も大きく変化してきました。 食生活は急速に欧米化し、コメ・麦・大豆と魚・畜産物などを組み合わせた日本型食生活が都市・若年層から崩壊しつつあります。 また、地域の風土に根ざした食文化も失われつつあります。 そのため農業構造も根底から変化してきています。

しかし、農業近代化はいま大きな反省過程にあり、「持続可能な開発・農業」は世界的なうねりとなっています。 自然や環境に配慮しながら農業生産を行い、安全で良質な食料をいかに供給するか、自給か貿易か、また、生活環境や食生活の向上のために何が必要なのか。 農業経済学が解明すべき課題は広範囲になり、その役割もますます大きくなっています。

私が目指している農業経済学は、まず事実から出発し、事実の積み重ねのなかから特殊性や普遍性を明らかにしていくという研究方法に重点を置いています。


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