パッシブ・テラヘルツ計測
サーモグラフィーはパッシブイメージングの代表例ですが,既存製品では波長領域や感度に限界があるので微視的ダイナミクスの研究には使えません.熱輻射のミクロな起源は電子やイオン或いは分子のダイナミクスによるものであるため,従来技術では時間・空間的に平均化された輻射を見ているにとどまります.局所的に非平衡な状態を短時間で測定することができれば,電子・イオン・分子のあるがままのダイナミクスをミクロなレベルで探求することが可能になります.一般にパッシブ法で検出すべき放射強度は面積の2乗に比例して小さくなりますので,高い空間分解能を要求すると光子レベルの感度が必要となります.感度の圧倒的改善は,時間・空間分解能の向上をもたらし,結果的にこれまでのサーモグラフィーとは質的に異なる情報を提供することになるでしょう.一方,回折限界をはるかに超える空間分解能の到達は(検出感度さえ許せば)非開口型近接場技術により十分可能です.局所領域からの極微弱な放射をパッシブに計測しようとするこのチャレンジングな応用を目指して,私たちはテラヘルツ帯域の検出器や計測手法を開拓しています.
