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専任教員の教育研究活動

 

      

       教授:丹生谷 博   准教授:松下 保彦  准教授:佐々木 信光
      (2017年3月定年退職)

施設専任教員の丹生谷教授・松下准教授・佐々木助教は農学部および大学院農学研究科(修士),連合農学研究科(博士)を兼担し,講義・実験指導を分担している。現在は,農学部応用生物科学科の協力教員として,「遺伝子工学」の講義と「応用生物 科学実験」等の実習を担当している。施設内の専任教員研究室(遺伝子工学研究室) には主として応用生物科学科4年生,応用生命化学専攻の修士課程学生,および連合農学研究科の博士課程学生が所属し,幅広いテーマで課題研究を進めている。他大学 からの大学院進学の受入も多い(大学院生の受入れについてはこちら)。

<植物ウイルスの移行タンパク質の研究>
 植物ウイルスは 特異的なレセプターとの結合を介した細胞内侵入はなく,植物組織の傷口から侵入する。しかしながら,植物細胞内においてはウイルス遺伝子産物と植物細胞由来の各種タンパク質との相互作用を通じて感染拡大や抵抗性反応が進行する。その1例として,トマトモザイクウイルス遺伝子産物である移行タンパク質(MP)は,隣接細胞へ の感染拡大に重要な役割を演じている。専任教員研究室では,組換え型MPタンパク質を利用して,MPが細胞内のカゼインキナーゼII(CK2)と相互作用してリン酸化される可能性を示した。次に,MPをプローブとしたウエストウエスタンクローニング法に より,MP-interactingotein(MIP)の cDNAを多数単離したが,そのうちのMIP102 クローンについては,シロイヌナズ ナではKELPという名の転写因子としての報告があり,PR-2という感染応答遺伝子発現を制御している。従って,タバコにおいてもウイルスのMPがMIP102と結合し,その核内輸送を阻害することにより,感染応答遺伝子の発現を抑制しているのではないかと考えられる。一方,植物への遺伝子導入によりMIP102 を過剰発現させると,MPの働きを阻害してウイルス抵抗性の植物を開発できる可能性もあり,基礎研究と応用面の両方のアプローチを進めている。

<植物細胞のウイルス抵抗性遺伝子産物の研究>
 タバコのウイルス抵抗性遺伝子として報告されているTm-2,N',N 遺伝子産物はウイルス遺伝子産物であるMP,コートタンパク質, ヘリカーゼドメインとそれぞれ特異的な相互作用をし,ウイルス 侵入を認知することにより過敏感反応等を誘導すると考えられている。専任教員研究室では,N遺伝子産物の各ドメインと相互作用するcDNA産物のクローニングを行い,抵抗性遺伝子産物の情報伝達経路の解明をめざしている。

<レセプターキナーゼによるシグナル伝達機構の研究>
 動物細胞の膜貫通型レセプターキナーゼの多くがチロシンキナーゼ活性を持つのと対照的に,植物細胞で見つかっているレセプターキナーゼはセリン・スレオニンキナーゼである。ブラシカ属植物の柱頭に発現し,自家不和合性に関与するSRK 遺 伝子産物は花粉表層タンパク質との相互作用を通じて自己・非自己の認識情報を伝達 する。最近では,植物ホルモンの1種であるブラシノライド受容体BRI1 もキナーゼドメインを持つことが報告された。専任教員研究室では,これらレセプターキナーゼドメインを組換えタンパク質として活性のある酵素として精製した。このキナーゼを利用して,ニトロセルロース膜に転写したファージプラークのタンパク質をリン酸化させる固相リン酸化法により,キナーゼ基質のcDNAスクリーニングを進めている 。レセプターキナーゼの標的タンパク質を同定することにより,シグナル伝達経路を明らかにすることが目標である。

<受託研究など>
 農林水産省からの受託研究として,平成9〜10年においてバイオテクノロジ ー先端技術開発研究プロジェクトのうち,「組換え型抗ウイルスタンパク質の生産と抵抗性植物の作出」の課題を担当した。平成11〜13年度には,21世紀グリーンフロンティア研究事業のうち,「遺伝子組換え技術を応用した次世代型植物の開発に関する 総合研究」の課題を担当した。いずれも,ウイルス遺伝子産物の機能阻害タンパク質のスクリーニングを行い,遺伝子導入法により,ウイルス抵抗性作物を開発するものである。

 丹生谷教授は平成8〜9年に,農業生物資源研究所の省際基礎研究プロジェクトの非常勤研究員として,アブラナ科植物の自家不和合性因子の研究を分担した。その他,平成9〜12年には,筑波大学先端学際領域研究センター(TARA)客員研究員を 兼任し,ヒトレトロウイルスによる細胞機能の修飾機構の研究に参加している。

<その他>
 丹生谷教授は平成6年より日本技術士会に所属し,生物工学部門の技術士として,官公庁・民間企業等に勤務する技術士補の研究・技術指導を実施している。また,民間のボランティア団体が主宰するインターネットによるライフサイエンス・インフォメーション・ネット(LNET:http://homepage2.nifty.com/jyuseiran)のサポーターとして,生命科学技術に関する一般社会人からの質問にコメントを投稿している。