東京農工大学

受験生の皆様

活躍する卒業生

科学的アプローチで、農業の現場の課題に挑む 富山県農林水産総合技術センター 園芸研究所 花き課 主幹研究員 農学博士 川部眞登さん 大学院連合農学研究科 生物生産学専攻 博士課程修了

東京農工大学で博士課程を修了後、米ワシントン州立大学博士研究員、中央農業研究センターでの研究職などを経て、富山県の職員となった川部さん。大学院での経験は、どのように役立っているのか聞きました。

現在のお仕事

富山県の職員として、園芸作物の病気を研究

富山県の職員として、園芸作物の病気の研究をしています。担当するのは、チューリップなどの花が中心。最近は、トマトやタマネギのほか漢方薬などに用いる薬用作物も扱います。私の仕事は、病気の予防策や事後の対策について考えること。土壌病害の原因になるカビやバクテリアを分析し、科学的な解決方法を探ります。このほか、新しい農業技術を県内に導入する際の可否の検討や導入指導なども行います。

農家さんに喜んでもらえるのがやりがい

この仕事の面白いところは、現場の課題を解決するという明確なゴールがあること。農家さんから上がってくる「なんとかして!」という声に応え、目に見える効果を提示できたときは、大きなやりがいを感じます。ここに来る前は、中央農業研究センターという国の機関で研究職をしていました。このときは、実験室にこもって分析をしていることが多く、自分の研究がどこで活かされているのか手応えを感じづらい環境で……。今の生活は新たな研究テーマを見つける上でも有意義だと思っています。

農工大への入学~研究活動

大学院での研究テーマは「植物病理」

私は大学院の修士課程まで東京都内の私立大学で学び、博士課程から東京農工大学の研究室に所属しました。研究テーマは「植物病理」。ここで学んだ土壌病害の原因を生体的に分析する技術は、今の仕事で大いに活かされています。

また、それ以上に役立っているのは、研究過程で鍛えられた科学的根拠をもって未知の問題を明らかにする手法です。農業の世界では、各農家さんが勘と経験で積み上げたノウハウが地域ごとに蓄積されているのが通例です。これを次世代に継承していくには、科学的なデータを用いて「勘」や「経験」を記述し直す必要があります。

農家さんに技術指導をする際も同様で、農薬を撒く時期や回数について、その効果をデータとともに説明すると必ず納得してもらえます。こうしたコミュニケーションの部分でも自分がこの地にいる意義があると自負しています。

ヘトヘトになりながら論文を書き上げた思い出

農工大の生活といえば、恩師の厳しい指導を受けながら、ヘトヘトになりながら論文を書き上げた思い出しかありません(笑)。しかし、実験漬けの日々のなかで研究者の基本となる考え方や今も財産となる人的ネットワークを得ていたのだと今になって思います。みなさんもぜひ農工大で寝食を忘れて没頭できるような研究テーマを見つけてください。

今後の目標、夢

付加価値を持つ食品を富山から全国へ!

「農業」は、衣食住にいずれにも関わるやりがいのある仕事です。特に、日本人は「食」に対するこだわりがすごい。実際、日本人がつくる作物のクオリティは、世界的にも格上の品質です。
時代は「量」より「質」へ。地方の農業は衰退していく産業かと思われがちですが、クオリティを追求して、販路を海外などに求めれば、チャンスはまだまだ無限にあります。むしり、地方の農業はこれからますます面白くなると思います。

「おいしいものを食べたい」という欲求が世界からなくならない限り、農業がなくなることはありません。だからこそ、機能性食品など、新たなニーズにも積極的に対応していきたいと思っています。今後は、富山県から付加価値を持った食品を全国に発信していくのが目標です。

※掲載内容は、2016年10月取材時のものです。