活躍する卒業生
現在のお仕事
東北大学多元物質科学研究所で、「エアロゾル」を軸とした大気化学の研究に取り組んでいます。エアロゾルというのは、空気中に漂っている微粒子全般のことを言います。最近では「エアロゾル感染」というワードもよくニュースで目にしますが、これは空気中に病原体が含まれた微粒子=エアロゾルが漂うことによって引き起こされる感染のことを言います。PM2.5や黄砂、花粉などもエアロゾルの一種です。
私は、このエアロゾルが地球温暖化などの気候変動に重要な影響を及ぼしている可能性に着目しています。エアロゾルは、地球に入ってくる太陽光を散乱・吸収する効果があり、また雲粒へと成長することで気候の形成と密接に関わることがわかっています。すなわち、エアロゾルには温暖化を抑制する地球冷却効果があると考えられているのです。
しかし、このエアロゾルにどのくらい気候の影響があるのか、明瞭な科学的知見は見出されていません。これを明らかにするために、私は「その場測定」というアプローチを考え、大気中の現象を実験室で再現し、一つひとつのエアロゾルを細かく検証して正確なデータを取得する方法を模索しています。
従来の実験手法では平均化されたデータしか得られなかったことから、より確実性の高いデータの収集が期待できます。この革新性を評価していただき、JST(科学技術振興機構)の「創発的研究支援事業」の第1期生にも採択されました。
農工大での研究活動
在学中は工学部化学システム工学科(現:化学物理工学科)で学んでいました。当時は成績が悪く、研究室の担当教員であるレンゴロ・ウレット教授にもご迷惑をかけたのですが……結果的にはそこで出合ったエアロゾル研究の面白さを現在まで突き詰めることになりました。特に、国が支援する研究領域で工学部と農学部が連携して行っていた「エアロゾル研究の植物・人間系へのインパクト」という先進的な課題に挑戦できたことが、研究者の道に進むきっかけになったと思います。農工大は教員ひとりに対する学生数が少ないので距離が近く、手厚くサポートしてくれる環境が魅力だと思います。ぜひこの場所で自分の興味のある分野に打ち込んでください。
※掲載内容は、2022年11月取材時のものです。