地域に広がる農業・林業の生産現場におけるさまざまな課題では,まず,各現場の状況を把握し,季節や環境の変化に対して応答あるいは順応する作物や樹木の様子を詳しく知ることが必要です。
これまで,地上観測に基づく植物―光環境モニタリング・モデリング をテーマに,
を行ってきました。
これら地上観測を中心に取り組んできたモニタリング・モデリングの結果から,地域のスケールへと展開する見通しが付いてきました。このような精緻な地上観測を継続しながら,以下のテーマも並行して取り組んでいます。
植物生産力は,光合成による大気中の二酸化炭素の固定量に相当し,気候変動や温暖化が農業生産や森林資源に与える影響を評価する上での重要な指標のひとつです。どこで,どれくらいの生産力があるか,定量的に評価できなければ具体的な地域対策に繋がらないため,地域レベルで植物生産力を知る必要があります。
このテーマでは,試験ほ場や演習林での精細な観測の積み重ねと観測データの解析結果に基づいて,時系列衛星画像を介した農地や林地への空間展開によって,植物生産力の広域的な動態把握を目指しています。
これらの研究を通して,食料の安定的確保,自然環境や生態系に関連する様々な課題に貢献できたらと思います。
また,地球規模の視点から地域で起こっている気候変動の影響に着目し,次のテーマにも取り組んでいます。
大雨・洪水,干ばつ,猛暑,冷夏,山火事など,異常気象による被害が世界各地で頻発しているニュースをよく耳にします。これらの被害をもたらす大きな要因が,気候変動と言われています。
このような気候変動にともなう気象災害について,いつ頃,どのあたりで,どのような気象現象が起こるかを予測する研究が進められています。同時に,突発的に起こりうるリスクに対する“備え”が地域には必要です。
本テーマでは, 長期に渡り観測された気象データや衛星画像の解析に基づいて, 気候環境やその年々の気象要素に対してどのような植生の応答(反応)や地表の変化がみられたかを時空間的に解析しながら, 地域性の特徴やその地理的環境要因との関連性を明らかにし, 気候変動が地域の農業生産や森林資源に与える影響とその脆弱性を評価していきます。
これらの研究を通して,限られた地域資源の有効的・持続的な利用や気候変動への地域対策に貢献できたらと思います。