結晶化現象を利用した工業操作を晶析と呼びます。これは化学工学分野の分離操作の一つで、生命関連物質である医薬品工業や、アミノ酸や各種の塩を中心とした食品工業で非常に広く用いられている操作です。晶析は二つの特徴を持っています。一つは析出する結晶が純粋であることを利用した、目的成分の分離。もう一つは粒状の結晶が作成できるので粒子群の製造です。このように必要な物質を高純度に、そして粒子群として生産できることが特徴です。しかし、工業的には解決しなければならない課題がいくつかあります。例えば下の写真の例です。この2つの写真は痛み止めの時に、よく処方されている医薬品の結晶写真です。左は綿状の結晶で、右はプリズム状の結晶です。化合物は同じでも少しの操作の違いで、結晶の形が変化してしまいます。こうなると、薬の効き目が変わり問題となります。これは操作条件の違いによって析出する結晶の多形が異なることが原因です。したがって、結晶の形や多形をいかに制御するか、さらにはどのように粒径分布を揃えるのかを考え、答えを用意しておく必要があります。研究室では、高付加価値な結晶素材開発への展開も視野に入れながら、結晶化現象を基盤とし、現象論に裏付けされた晶析操作を確立することを研究戦略とし、結晶粒子群に関する問題解決に取り組んでいます。
・Anti-Solvent添加晶析を利用した新規結晶形態の創製法
・pH-溶解度プロファイルを用いた反応晶析での結晶粒子群品質制御
・Taylor Vortex晶析装置を用いた結晶粒子群製造の連続化
・Co-solvent effectを持つ晶析系での収率と粒径分布に対する影響の検討
・共結晶の連続的製造法の提案と結晶品質評価
・ミリチューブ型 Taylor Vortex連続晶析装置を用いた結晶品質制御
・晶析技術を応用した結晶性食品の安定製造と品質制御
・多成分相図を利用した共結晶の新規製造法の提案と結晶品質評価
・有機溶媒中での医薬水溶性塩の晶析現象と品質制御
・テンパリング操作を用いた準安定形結晶の創製と添加物効果
・核化トリガーを用いた単一分散結晶粒子群の創製
・高機能結晶性食品開発での固液平衡と結晶化速度
・鋳型界面を利用したミリ流路内泡沫での有機微結晶粒子群製造
・海水淡水化プロセスからマグネシウム資源を高効率で回収するための晶析操作法
・気液界面存在下での核化促進効果を利用した微結晶粒子群製造
・懸濁型融液晶析による有機酸結晶製造での結晶純度とその改善
・オイリングアウト現象を経由する結晶化の解析とその応用
・Anti-solvent晶析法に対する変調操作の効果とその操作設計
・Anti-solvent 添加晶析での結晶形態変化の機構解明
・多成分混合溶液から分子間化合物を分離するための晶析法の開発
・懸濁晶析での変調操作導入による結晶形態改善手法の開発
・非溶媒添加晶析での噴霧法を用いた結晶粒子群の品質制御
・結晶粒子群の品質と生産効率を同時に考慮する晶析操作法の検討
・有機溶媒中での水溶性塩製造での結晶品質制御
・液-液界面を晶析場とする有機微結晶粒子群の製造
・非溶媒添加晶析による医薬品結晶の品質制御
・電池材料製造での反応晶析による高度結晶品質制御
・蒸発晶析の変調操作で実現する結晶の高効率生産法の開発
・回分冷却晶析での変調操作導入による結晶品質の改善
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