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メンバーによる研究紹介動画


1分子DNAの力学特性と遺伝子発現 −塩基配列に隠されたもう一つの役割−

溶液中で直径数ミクロンの物体を観察すると,ランダムに動き回る様子(ブラウン運動)が観察できます。ブラウン運動の駆動力は溶媒分子の熱運動であり,DNAやRNA,蛋白質などの生体分子は,重心運動だけでなく構造も熱的に揺らいでいます。“熱揺らぎの無視できない環境下で,少数分子による生体内の反応がいかに制御されているのか?”という問いに答えるためには,構造や物性に関する静的知見に加え,反応や生体分子のダイナミクスに関する1分子レベルの動的知見が不可欠です。

光ピンセットや磁気ピンセットなどを用いて生体高分子を1分子レベルで操作する手法は,熱揺らぎの無視できない系において微小な力(〜pN)や変位(〜nm)を測定する有効な手法です。これらの手法を用いることで,多分子測定では平均化されて見えない1分子レベルの情報を得ることが可能となります。

「DNAは生命の設計図」と言われますが,ヒトの場合,蛋白質の設計情報を担う箇所は全塩基配列の2%未満にすぎません。残りの98%はどのような役割を担っているのでしょうか? この生命のダークマターともいえる問題に対し,我々は遺伝子発現に直接影響を及ぼすDNAの高次構造に着目した研究を行っています。物理の視点から「DNAは電荷を持つ細くて長いひも」と捉えると,塩基配列には蛋白質の設計情報だけでなく,構造を決める物性が記録されていると見ることもできます。1本のDNAを直接引っ張ったり,ねじったりすることにより,“DNAの熱揺らぎを制御するのに必要な力の大きさ”や“素早くねじると大きな構造変化が生じやすいこと”などが分かってきました。

K. Yoshida et al., J. Phys. Soc. Jpn. 87, 093801 (2018). https://doi.org/10.7566/JPSJ.87.093801

T. Baba, T. Sakaue, and Y. Murayama, Macromolecules, 45, (2012), 2857-2862. https://doi.org/10.1021/ma300019a

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DNA溶液の特異な粘弾性特性 −反応場としての細胞内環境−

生命状態は細胞内で生じている様々な化学反応により制御されています。一般に化学反応は熱運動による分子同士のランダムな衝突で生じており,反応の頻度は温度と溶液の粘性によって決まります。細胞内は核酸や蛋白質,糖などの高分子が高濃度で存在しており,粘性だけではなく弾性を示すことが知られています。細胞や細胞核内の粘弾性は,遺伝子発現や腫瘍の形成と関係しており,生物,医学の観点からも注目されています。我々は反応場としての細胞内環境の物理的特徴を明らかにするために,高濃度DNA溶液の粘弾性特性に着目した研究を行っています。熱運動する微粒子をプローブとして用いることで,“DNAの絡まり合いにより生じる弾性が微粒子の運動を抑制すること”や“従来の理論では説明できない複雑な緩和が生じること”,“この複雑な緩和から粘性や弾性を評価可能であること”が分かってきました。

A. Miyamoto and Y. Murayama, J. Phys. Soc. Jpn. 91, 073801 (2022) https://doi.org/10.7566/JPSJ.91.073801

M. Tanoguchi and Y. Murayama, AIP Advances 8, 105218 (2018), chosen as an "Editor's Pick". https://doi.org/10.1063/1.5048821

M. Kuroda and Y. Murayama, Rev. Sci. Instrum. 86, 125105 (2015). https://doi.org/10.1063/1.4936879


緑藻(ボルボックス)の光応答 −要素から機能が生まれるしくみ−

弾性率や誘電率,磁化率は力や電場,磁場に対する応答を特徴付ける“物の性質”です。では,“生き物の応答”はどのような法則に従い,“生き物の性質”はどのように特徴付けられるのでしょうか? この問いに対し,我々は緑藻の運動に着目した研究を行っています。緑藻が光に向かう性質を“生き物の性質”と捉えることで,力学や流体力学,熱統計力学の枠組みで説明できること,できないことが見えてきました。独自の装置を用いた細胞,個体,集団レベルの実験により,単純な要素から高度な機能が生まれるしくみや適応,多細胞進化の謎を解き明かします。

ボルボックス(V. carteri)は緑藻類に属する多細胞生物です。一つの個体は直径数百μmの球形をしており,数千個の体細胞が球面上に配置されています。一つの体細胞には2本の鞭毛が備わっており,水中を泳ぎながら光源に向かって進む性質(走光性)を示します。「要素」にあたる鞭毛自体は,照度の変化に対し“動く”or“止まる”という単純な応答しか示しませんが,これらが数千個集まった一つの個体は,相対的な照度の差を検知するという高度な「機能」を示すことが分かってきました。

M. Ozaki and Y. Murayama, Current Physical Chemistry, 5, (2015), 64-72. The published manuscript is available at EurekaSelect via https://doi.org/10.2174/1877946805666150707182956

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