<東京農工大学 木質資源特性科学研究室(半研究室)

荒川 泉(ARAKAWA Izumi)


Profile

  名前:荒川 泉(ARAKAWA Izumi)
  出身高校:浦和第一女子高等学校(埼玉県)
  趣味・特技:読書・短距離走
  

2015年3月 IAWPS ポスター発表会場にて

研究紹介

  研究テーマ:「心材形成におけるスギ放射柔細胞の核および液胞の形態学的機能解析」

地球環境において様々な役割を担い、木質資源を生産する樹木の特徴の一つとして、寿命が非常に長いことが挙げられます。樹木の長寿命を支える要因の一つに、心材形成という樹木特有の生命現象が挙げられます。樹木の幹の大半は死細胞で構成されますが、柔細胞と呼ばれる一部の細胞は長期間生存し続け、代謝や養分貯蔵などの機能を担います。特に、樹幹の半径方向に長く連なって配列する放射柔細胞は樹幹内部に向かって老化し、最終的に細胞死を引き起こし死に至りますが、その前に抗菌性や特有の色・においを樹木に付与する心材物質を生合成することが知られています。そのため、心材形成機構を解明するためには、密接な関連性をもつ放射柔細胞の細胞死について理解する必要があります。特に、植物細胞の細胞死過程には液胞が重要な役割を果たすと考えられることから、本研究では、心材形成に伴う放射柔細胞の細胞死過程における核と液胞の変化に着目します。

1つ目の着眼点である核はDNAを含み、細胞の生理機能を制御する根幹を担います。過去の研究により、細胞死や心材形成に伴い、放射柔細胞の核は楕円形から円形、凝縮状態へと形態変化し、最終的に自己分解により消失することが知られています。しかしながら、この核の形態変化が核の生理機能の変化を表すのか否か、核酸の状態はどのように変化するのか、DNAの自己分解はいつ始まるのか、ということは明らかになっていません。そこで私は、様々な染色手法と顕微鏡観察を用いて核について詳細な解析を行い、核の形態と機能の関係性について調べています。

2つ目の着眼点は放射柔細胞の液胞です。液胞は植物細胞に特有の細胞小器官であり、浸透圧調節などの機能をもちます。道管や仮道管などでは、液胞の崩壊がトリガーとなって核の自己分解、細胞死が引き起こされますが、木部繊維では液胞の崩壊よりも先に核の自己分解が起こると報告されています。しかしながら、放射柔細胞における液胞崩壊と核の自己分解の関連性は明らかになっていません。そこで私は、放射柔細胞の細胞死における液胞崩壊と核の自己分解の前後関係を明らかにするため、卒業論文で検討した液胞の生体観察手法と従来の観察手法を組み合わせ、液胞の解析に取り組んでいます。

卒業論文の紹介はこちら
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