OUR AIM OF RESARCH
流体をコントロールする観点から、飛行物体を制御する。
深宇宙探査、宇宙旅行、太陽発電衛星など、次世代の宇宙開発を実現するためには、 様々な新しい技術を宇宙機・宇宙往還機(ロケット)に取り入れる必要があります。
例えば、小惑星探査機“はやぶさ”に搭載された、イオンエンジンをはじめとする電気推進システムの研究。
宇宙に吹くプラズマの風“太陽風”を磁場によりコントロールして推進する宇宙機、プラズマセイルの研究。
これら以外にも、さまざまな斬新なアイディアの実現に取り組みます。
キーワード
航空宇宙工学・プラズマ工学・流体力学・空気力学・伝熱工学
RESEARCH THEME
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流体制御アクチュエータ
流体制御
混相流
実験流体力学
プラズマアクチュエータ
誘電体バリア放電プラズマアクチュエータ
プラズマアクチュエータはあらゆる流体機器での応用が期待できる流体制御デバイスです。誘電体を2枚の電極で挟む単純な素子で、電極間に数kV、数kHzの交流電圧を印加することで発生する放電によりジェットを生成します。
本研究室では特に誘電体バリア放電と呼ばれる放電形態を利用した誘電体バリア放電プラズマアクチュエータ(Dielectric Barrier Discharge Plasma Actuator)に注目し、研究を行っています。
(左:模式図、右:駆動前後の写真)
印加電圧波形がアクチュエータの性能に与える影響
プラズマアクチュエータが生成するジェットの流速は数m/sと遅く,様々な流体機器への応用を実現するためには,出力の向上が必要不可欠です。出力向上の鍵となるのがプラズマアクチュエータを駆動する際に印加する高電圧波形です.
様々な印加電圧波形で駆動したときの推力・消費電力・流れ場などの特性調査を実験および数値計算の2つのアプローチで行っています。これらの調査で得られた知見をもとに、印加電圧波形の最適化・物理的な駆動メカニズムの解明に向けて研究を行っています。
(印加電圧波形に関する研究:(左)体積力(右)時間平均推力)
気体に作用するメカニズムに関する研究
プラズマアクチュエータは,プラズマと大気中の中性粒子との相互干渉により発生する,体積力とジュール発熱を利用することで,様々な流体制御に寄与します。したがって体積力場・ジュール発熱場をよく理解することが,プラズマアクチュエータの流体制御性能を把握するうえで重要です。
体積力場やジュール発熱場は直接計測することができません。本研究室では,体積力場・ジュール発熱場が周囲気体に作用した結果として形成される速度場・密度場を定量計測することで,その特性に関する研究を行っています。 下の図の速度場はPIV(Particle-Image-Velocimetry),密度場はBOS(Background-oriented Schlieren)により計測した結果です。
(プラズマアクチュエータ駆動時の流れ場計測:(左)速度場 (右)密度場)
3電極プラズマアクチュエータ
プラズマアクチュエータの出力向上に向けて,電極を新たに追加した3電極プラズマアクチュエータに関する研究を進めています。本研究室では3電極プラズマアクチュエータの中でも、DC電極を追加したTED-PA(Tri-ElectroDe Plasma Actuator)と、接地電極を追加したDGTEPA(Dual-Grouded Tri-Electrode Plasma Actuator)に注目しています。
TED-PA、DGTEPAともに2電極プラズマアクチュエータと比べて高出力となることが期待できますが、さらなる出力強化のため、動作メカニズムの解明や最適化などが必要です。そこで、本研究室ではシミュレーションや実験による3電極プラズマアクチュエータの研究を行っています。
ボルテックスジェネレータ型プラズマアクチュエータ
プラズマアクチュエータが生成するジェットと、主流が直交するように配置すると、ジェットと主流が干渉することで主流方向に軸を持つ渦(縦渦)が発生します。この渦は運動量混合を促進することで,流体機械の空力性能を低下させる要因となる流れの剥離を抑制することができます。この設置方法のPAは,従来の渦を発生させる流体制御デバイスとして知られているボルテックスジェネレータ(VG)に倣い、ボルテックスジェネレータ型プラズマアクチュエータ(VG-PA)と呼ばれています。 本研究室では、VG-PAによる流体制御効果を向上する方法として提案されている、2つのVG-PAを対向させる対向型PA(Facing-PA)を研究対象としています。
先行研究では、Facing-PAの露出電極間距離(λ)を変化させることで、生成される渦度の大きさが変化することが知られています。しかし、渦度変化メカニズムについてプラズマの挙動に着目した研究は多くはありません。そのため本研究室では対向型PAの作動特性の解明に向けて、ハイスピードカメラによる放電撮影やPIVによる速度場計測などの実験や、プラズマシミュレーションを行ない、対向する電極から進展するプラズマ同士の干渉や挙動について研究しています。
(ハイスピードカメラにより撮像した瞬時の放電写真)
針対平板型プラズマアクチュエータ
電極構成の異なるプラズマアクチュエータについても研究を行っています。 針対平板型プラズマアクチュエータは、高電圧を印加し針電極近傍で放電を生じさせることで生成されたプラズマが電界によって加速され、周囲気体の中性粒子と衝突を繰り返すことで、電気流体力(EHD力)を生成します。 最終的には、針電極から平板電極に向かう方向のジェットを生じさせることができます。応用先として、このジェットを利用した推進器などが検討されています。 しかし、この形状のプラズマアクチュエータは放電特性や電気流体力生成メカニズムがいまだ明らかでありません。 我々はプラズマの動きを追う放電シミュレーションを行うことで、物理的メカニズムの解明を目指します。
((左):模式図、(右):プラズマ分布)
翼周りの流体制御
前縁渦の制御
高迎角を迎える非定常翼には前縁渦(Leading-Edge Vortex、LEV)と呼ばれる渦が発生します。 昆虫・鳥類といった飛翔性生物は,羽ばたきにより生じるLEVが作る負圧によって追加の揚力を稼いでいると言われおり、これに着想を得た羽ばたきMAV(Micro Air Vehicle)の開発が進んでいます。 一方で、LEVが翼から離脱し移流すると動的失速と呼ばれる揚力の急激な低下が起こり、これは風車などの流体機械にとっては好ましくない現象です。 LEVの長所を伸ばしつつ短所を克服するべく、プラズマアクチュエータによる能動的流れ制御と、モーフィング翼による受動的流れ制御技術の開発を目指しています。
大型車両周りの流体制御
電車などの大型車両では、走行中に車両背面で後流が剥離することにより大きな圧力抗力が発生しています。 この空気抵抗を減らすことができれば、省エネルギー化につながります。
そこで西田研究室では、応答性が良い、機械的な制御が可能、単純な構造・軽量・薄いといったメリットを持つ、プラズマアクチュエータによる車両周りの空気抵抗を低減に向け、研究を行っています。
伝熱促進
プラズマアクチュエータによる熱伝達促進
流れを誘起する流体制御デバイスであるプラズマアクチュエータは、熱伝達を促進するデバイスとしての活用が期待されています。 薄く、軽量で、機械的可動部を持たないという長所から、電子機器内部やタービンブレード、熱交換機の冷却への利用に向けた研究が行われています。
プラズマアクチュエータの冷却への活用において。放電による発熱が流れを加熱してしまうことが問題となります。 この発熱は冷却効果に影響を及ぼすことが明らかになっていますが、発熱の影響を考慮して冷却効果を正確に評価した例はありません。
そこで、西田研究室では、プラズマアクチュエータの熱伝達促進効果と発熱による加熱効果を切り分けて、定量的に評価する手法を提案しています。 この手法を用いて、冷却に有効なプラズマアクチュエータの設置条件や駆動条件を明らかにすることを目指しています。
(左)熱伝達促進の模式図,(右)PA駆動前後の温度差分布
レーザー誘起マイクロジェットに関する数値計算
レーザー誘起マイクロジェット
レーザー誘起マイクロジェットは、細管内の液体にパルスレーザーを照射することで生成される、高速かつ極細のジェットです。 医療技術や印刷技術への応用が期待されており、安全性向上やジェット生成効率向上の観点から様々な研究が進められています。 レーザー誘起マイクロジェットの性能向上に向けて、本研究室では数値計算を用いた研究を行っています。
(ジェット生成のシミュレーション)
気泡パラメータの最適化に関する研究
レーザー誘起マイクロジェットのジェット速度は、レーザー誘起気泡から伝播する圧力波の時間履歴に依存することが知られています。 そこで、本研究室では、圧力波の時間履歴から求められる圧力インパルスの最大化を目的として、最適化アルゴリズムを用いた気泡パラメータの最適化を行いました。 また、ジェット生成効率向上のために、圧力インパルスと気泡内部エネルギーの比で表されるエネルギー効率の最大化を目的とした気泡パラメータの最適化も行いました。
(最適化アルゴリズムを用いた気泡最適化)
気泡と衝撃波の干渉に関する研究
液体中にレーザーを集光すると、条件によっては複数のレーザー誘起気泡が生じ、複数の衝撃波が重ね合わさったような多重衝撃波構造が形成されることが知られています。 レーザー誘起マイクロジェットを制御するためには、衝撃波と気泡が干渉することで形成される衝撃波構造を制御する必要があります。 しかしながら、実験による直接計測の困難さから上述した多重衝撃波構造の形成メカニズムは明らかになっておらず、制御性向上に向けて課題となっています。 そこで、本研究室では、圧縮性混相流シミュレーションによる多重衝撃波構造形成メカニズムの解明に取り組んでいます。
(多重衝撃波構造のシミュレーション)