マリンバイオテクノロジー of Matsunaga, Tanaka, Yoshino Lab.

Metagenomic Approach



メタゲノムライブラリー
環境中に存在する微生物は様々な物質を合成分解しており、紫外線吸収物質や除草剤、抗酸化物質などの有用物質が発見されています。海洋では、無脊椎動物である造礁サンゴやカイメンと共生する微生物から抗腫瘍物質や抗菌・抗真菌物質が単離されています。しかし、環境中の微生物の99%は単独で培養することが出来ません。微生物の単離・培養が基本的な技術としている従来の微生物研究では、このような難培養微生物を扱うことは困難でした。

そこで近年、環境の微生物から直接DNAを回収して塩基配列や機能を解析するメタゲノム解析が、難培養微生物の研究に用いられています。我々は海洋無脊椎動物と共生する微生物からDNAを採取し、それらを大腸菌に導入して、様々な環境DNAを持つ大腸菌のコレクション、メタゲノムライブラリーを構築しました。このメタゲノムライブラリーの大腸菌を用いて、酵素の活性や抗菌活性などを調べ、様々な酵素や有用物質の生産に関与するタンパク質をコードする遺伝子を探しています。そして、発見した遺伝子は大腸菌から分離し、機能や塩基配列の解析を行っています。

今後、得られた結果が海や海洋の生物に関する知見を広め、さらに、医薬品や食料、環境浄化、バイオエネルギー生産に応用されることが期待されます。

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Microalgal culture collection



海洋微細藻類カルチャーコレクション
海洋は地球の表面積の約7割、平均深度3800 mを有すると同時に、高温、低温、高圧など陸上には無い特殊環境が存在します。そのため、多様な環境に適応するための能力を持った多種多様な生物が存在します。当研究室では、微細藻類、光合成細菌などの海洋光合成微生物に着目し、カルチャーコレクションを構築すると共に、様々な有用物質生産株のスクリーニングを行っています。スクリーニングしてきた株を培養し、抽出・精製を行うことにより目的の物質を入手することが出来ます。

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光合成微生物は自然界の中での第一次生産者として海洋に豊富に存在するため、多様性に富み、有用物質のスクリーニングの対象として注目を集めています。当研究室では、海洋から分離した約800種類に及ぶ微細藻類、光合成細菌のカルチャーコレクションを保持しており、これまで抗酸化作用を示すアスタキサンチン、抗菌物質、多糖、水素、サプリメントに応用できるDHA、EPA、バイオ燃料の原料となる脂肪族炭化水素やトリグリセリドなどの様々な有用物質を生産する株をスクリーニングしてきました。微生物を供給源とした場合、単位面積当たりの収量が高いなどの利点が挙げられ、各物質の生産性の向上が見込まれます。さらに、遺伝子工学や微生物工学の手法を利用することにより、実用化に向けた生産方法についても検討を進めています。

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