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◎ 「昆虫病理学研究ワークショップ」を開催
 11月18日(水)、府中キャンパス2号館401室において、「昆虫病理学研究ワークショップ」が開催されました。
 今回のワークショップでは、昆虫ウイルスの分子系統解析の専門家であるElisabeth Herniou博士をフランスのツール大学から招き、ポリドナウイルス研究の最新トピックについて講演があり、本学農学府応用遺伝生態学研究室の修士課程学生6名による研究紹介も行いました。発表はすべて英語で行われ、修士課程の学生や鹿児島大学から参加したバキュロウイルス等の研究者も交えた約30名が活発に有意義な研究交流をすることができました。
 ポリドナウイルス(PDV)は、多くのコマユバチ科とヒメバチ科の寄生蜂に共生する昆虫ウイルスで、これらの寄生蜂は、寄主昆虫に卵を産み付ける際にPDVを寄主体内に注入し寄主の生理状態を制御します。PDVは生きた寄主内での寄生蜂幼虫の生育に必須ですが、生物学的に非常にユニークな特徴を持ち、まずPDVのゲノムが、プロウイルスとして蜂のゲノムに組み込まれており、雌蜂の卵巣でのみウイルスの複製がおきます。卵巣で生産されたウイルス粒子の中のウイルスのゲノムを調べると多くの非コード領域があり、ウイルスというよりもむしろ真核生物に近いゲノム構造をしており、これらのウイルス粒子中のゲノムには、構造タンパク質などの遺伝子が含まれていないなど、謎だらけでした。最近、Herniou博士らのグループが、蜂の卵巣で発現する遺伝子を調査したところ、PDVの構造遺伝子や発現調節遺伝子が見つかり、進化的には、バキュロウイルスやヌディウイルスなどの昆虫ウイルスと共通の起源を持つことがあきらかになりました。
 応用遺伝生態学研究室では、これまで寄生蜂やバキュロウイルス等の研究を行ってきており、修士課程学生の研究発表を通じて、この機会に昆虫ウイルス研究の最前線レベルの交流を行うことができました。
 
Elisabeth Herniou博士 英語での研究交流
 
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