◎ 生物システム応用科学府で学外見学プログラムを実施
 −農・工・理の融合技術に触れる−

 生物システム応用科学府(BASE)では、毎年、農・工・理の融合技術をキーワードに博士前期課程1年生を対象として、農工理に関連する学外施設見学を実施しており、平成20年度は、茨城県つくば市にある「(独)農業生物資源研究所」と「(独)農研機構 食品総合研究所」の2施設を見学先としました。
 本プログラムがより充実し、参加者の理解を深めるために、@見学先から招いた講師2名による事前講義、A異なる専修の学生を混合した融合グループによる見学参加、B見学終了後の意見交換会、Cグループレポート作成の4つを柱とする実学的双方向学習が実施されました。

 9月12日(金)、参加する25名の学生を対象に「植物生育モニタリングのための画像計測システムについて」、「近赤外分光法を利用した食品の非破壊検査技術について」の事前講義が開催されました。
 また、9月22日(月)には学外見学が行われ、午前中は(独)農業生物資源研究所内「ジーンバンク」においてイネ種子庫等の施設を見学しました。このジーンバンクでは国内やアジアを始めとした世界各国の農村から収集した種子等の生物資源が専門家らによって分類・同定され、増殖・保存された資源は新しい品種の開発や、ゲノム研究、教材として広く利用されているとの説明があり、遺伝資源の管理・活用における日本の取り組みについて知ることができました。また、同研究所内の光環境応答研究ユニット実験室ではイネ初期成育と光受容体遺伝子解析、イネ分げつ期成長解析、葉の成長運動記録など目的に応じて異なる画像撮影装置が研究・開発されており、チャンバー内に設置された画像撮影装置による計測の様子を見学することができました。午後からは、(独)農研機構食品総合研究所を訪れ、非破壊評価ユニット研究室において近赤外分光法を用いた農産物の品質評価法、残留農薬の迅速測定法、生乳微生物汚染の測定法について、また、流通工学ユニット研究室では農産物の流通経路において同一品質を保持しながらコスト(費用、環境負荷)を最小化する手法について、実際の装置を使ったデモンストレーションを交えながらの説明を受けました。終了後には、グループ毎に分かれて見学内容について活発な意見交換が行われました。

 今年度実施したプログラム内容から、「食料の安定供給と安全確保」という日本が抱える課題を解決するための有効な手段となりうることから、今後のさらなる技術発展が求められています。中でも「イネ生育モニタリングシステム」や「近赤外分光法による農産物・食品等の非破壊検査法」には植物内光受容体による環境応答特性、農産物・食品の吸光スペクトル解析、分光計測技術、画像計測・処理技術、環境管理など、BASEで学ぶ農学、工学、理学の知識と技術が集約されており、それら3分野が見事に融合された応用技術の一端を学生一人一人が肌で感じることができたものと思われます。また、事前講義で使用されたパワーポイント資料および講義内容を撮影したムービーファイルや、見学終了後に作成した全グループのレポートを本学eラーニング学習管理システム(Moodle)上に公開することにより、本プログラムより得られた知識、認識を共有することができました。
 
<農業生物資源研究所にて> <食品総合研究所にて>
 
  
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