坂野好幸教授が日本農学賞を受賞

 本学大学院共生科学技術研究部生命農学部門(応用生命化学専攻/応用生物科学科分子生命化学講座)の坂野好幸教授が、平成18年度日本農学賞および第43回読売農学賞を受賞することになりました。
 日本農学賞は農学関係の学会の推薦を基に日本農学会が選考を行うもので、日本の農学研究者間における最高の栄誉とされております。坂野教授は日本応用糖質科学会の推薦を経て、受賞されることになりました。また、読売農学賞は日本農学賞の受賞者に対し、読売新聞社から授与されるものです。授賞式は平成18年4月5日に執り行われます。
 対象となった課題名は「澱粉および関連多糖に作用する酵素の基礎と応用に関する先駆的研究」で、本業績はコメ、トウモロコシ、サツマイモなどの主成分である澱粉や関連する多糖類に作用する酵素の、基礎と応用に関するものです。坂野教授は、独創的研究からそれまで知られていなかった酵素反応を見い出し、世界に先駆けて酵素学的な解明を行いました。さらに、酵素を利用したさまざまな糖の調製法の開発の基礎を築き、世界的に高い評価を得ております。これらの成果はその後の新しい糖質の開発の方向性を示し、社会への多大な貢献につながっております。
 研究業績の概要は、大きく三つにまとめられます。一つめは、デンプンを分解する主要な酵素であるα-アミラーゼについて新規な反応を見い出し、当時のα-アミラーゼに関する定説を覆す、新たなα-アミラーゼの概念を提案したことです。二つめは、澱粉および関連する糖を分解する特徴的な性質をもつ酵素を、X線結晶構造解析の手法などにより立体構造と機能相関を解明し、機能性糖質の開発の基礎を築いたことです。三つめは、酵素を利用し新規な糖を多数創出したことです。なかでも、分岐サイクロデキストリンに関する研究は、糖質関連酵素の縮合反応を工業的に利用した初めての成功例として知られ、サイクロデキストリンの応用範囲を拡大し、食品産業などで多種類の新しい商品の開発に貢献しております。
 
      
<酵素TVA IIとサイクロデキストリンの複合体の立体構造:
世界で初めて二量体を形成するα-アミラーゼが存在することを明らかにされた。>
 
【坂野教授からの受賞メッセージ】
 このような栄誉ある賞を受賞できると思ってもいなかったので、本人もびっくりしています。これも日本応用糖質科学会の皆さん方のご支援とともに、東京農工大学の皆さんのご理解とご支援の賜物と思って感謝致しております。
 最近、特に大学法人化後、産官学の連携が強力に推し進められておりますが、「基礎」があってこその「応用」ということを益々身にしみている昨今です。東京農工大学が更に発展することを期待しますと同時に、微力ながらお役に立てればと思います。
  
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