Fluctuation and Big Data

Fluctuation and Big Data

Fluctuation and Big Data

Fluctuation

対象自体が示す揺らぎは特徴であり解読・活用する価値がある

 

流体中におけるナノ粒子や溶質分子などの微小な物体は,熱揺らぎによってBrown運動します.近年,DNAシーケンサーはもとより広義のLab On a Chip技術の発展により一分子を検出さらには識別するための研究が,世界的に卓越した技術を有する研究室で展開されており,そこではBrown運動の取扱いが実用上の重要な問題としても認識され始めています.

 

これまでμPIV等の研究では,Brown運動が忌避すべき存在とされてきました.それは,物体の位置や速度を特定する際に熱揺らぎによって精度に限界が発生するからです.しかし,有限温度で熱揺らぎは普遍的に存在しており,対象それ自体がBrown運動しているのであれば外乱ではありません.そして,状況次第で熱揺らぎは活かすべき有用なものにもなります.

 

近年ビッグデータという言葉が多岐に渡る場面で使われますが,これはデータが手に入るようになったことと,その的確な解析が可能になったことに起因しています.J. Keplerによる楕円軌道の発見がT. Braheの緻密な計測データに基づくように,一般に十分な精度・解像度・総量のデータが手に入るようになった状況は,理論的研究が活躍する好機です.

 

私達は,ナノ・マイクロ系における熱揺らぎの時系列ビッグデータを活かす研究を展開しています.既に,一粒子/一分子追跡(SPT/SMT)において点として認識される棒状粒子の拡散異方性や微生物の自発的運動を,軌跡のみから特定する理論的手法を提案しています(Phys. Rev. E., vol.85, 051134 (2012), J. Phys.: Condens. Matter, vol.25, 465103 (2013)).

 

ただし,ナノ・マイクロ計測でも依然,データの時空間解像度の限界が結論できる命題を大きく制限する場面は少なくありません.例えば,短時間の断続的な壁面吸着がある場合,一分子計測の変位分布が時間解像度の限界でGauss分布として測定される可能性があります(J. Comp. Sci., vol.10, pp.311-316 (2015)).計測装置系と理論解析手法は,車の両輪のように発展します.



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