Coarse-Grained Modeling

Coarse-Grained Modeling

Coarse-Grained Modeling

Scale Separation between a Particle and a Fluid Molecule

分子論か連続体の二者択一から大自由度の集約である粗視化へ

 

粗視化(Coarse-Graining; CG)という言葉が近年広く使われるようになりましたが,単なるメゾスケールの意味で使われていることが少なくありません.粗視化は統計力学の専門用語であり,ある解像度における記述をより解像度の粗い記述に集約することを表しています.したがって,厳密にはheuristicなメゾスケールモデリングは粗視化ではありません.

 

現在,分子動力学法(MD)の原子間ポテンシャルは主に量子力学計算の結果から第一原理的に求められますが,これも広義の粗視化です.基礎方程式で言えば,原子・分子系のHamiltonianを粗視化するとLangevin方程式が得られ,Boltzmann方程式を粗視化するとNavier-Stokes方程式になります.粗視化の際には,通常ある種の近似が導入されます.

 

実用上は,解像度を粗くすることにより,同じ計算資源でより大きな時空間スケールを扱うことができます.例えば,全原子MDでは取り扱い困難な,せん断流れにさらされる脂質二分子膜の構造不安定現象等をCGMDを用いて研究すると,分子論的な起源による連続体的な膜構造崩壊の素過程を明らかにできます(Phys. Rev. E., vol.82, 051602 (2010)).

 

ただし,解像度を下げる粗視化によって何らかの情報を失うことには常に留意が必要です.CGMDにおいて拡散的な挙動の時定数まで維持したい場合には,Newtonの運動方程式ではなく,的確な摩擦係数と共にある種のLangevin方程式を用いる必要があります.これは,粗視化ポテンシャルが自由エネルギーに対応し,拡散的な情報を捨象していることと対応しています.

 

そして,Brown運動を記述するLangevin方程式にも,注目する粒子が周囲流体分子よりも十分に大きな質量を持つという前提があります.Brown運動は分子論の証明だけでなく一分子計測など工学的にも重要です.私達は最近Langevin方程式の前提を超えた状況でのBrown運動の新たな規則性を見出しています(J. Chem. Phys. vol.142, 104301 (2015)).



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