第11回遺伝子実験施設定期公開セミナー(平成13年9月13日)
平成13年9月13日(木)午後3:00〜6:00
会場:東京農工大学農学部2号館1階講義室11号室
プログラム1
「遺伝子発現解析のためにはどの様なcDNA microarrayが必要か?」
国立精神・神経センター 神経研究所 塚原俊文
筋疾患の原因遺伝子は多種・多様なタンパク質をコードしている。これら遺伝子の変異がどの様な機序で病態を引き起こすのかについては解明されていない点が多い。我々は共通の病態像を特徴づける遺伝子発現プフィールを明らかにするため、ヒト筋cDNA microarrayの作製を開始している。本セミナーでは、遺伝子のデータベース構築からmicroarrayの作製・解析にいたる方法論と技術について紹介する。
プログラム2
「ゲノム解析に基づいた白血病発症機構の解析」
国立がんセンター研究所 市川 仁
白血病にはしばしば特異的な染色体転座が見られ、多くの場合、転座により異常なキメラ転写因子が産生される。これらのキメラ転写因子は、血球系細胞の分化や増殖に関わる遺伝子の発現異常を引き起こし白血病の原因となると考えられるが、その詳細はほとんど明らかになっていない。転座遺伝子の同定から、DNA チップを用いたキメラ転写因子が引き起こす遺伝子発現異常の解析に至る我々の取り組みを紹介する。
プログラム3
「中枢刺激薬による脳内遺伝子発現の誘導と神経可塑性」
ウェルファイド創薬研究所 梶井 靖
国立精神・神経センター神経研究所(客員)
覚醒剤、コカイン等の中枢刺激薬は主としてドーパミン神経伝達を亢進させ、幻覚・妄想状態にまで至らせる神経薬理作用を持つ。さらに、こうした急性効果にとどまらず、中枢刺激薬の経験は長期にわたって持続する脳神経回路の機能異常をもたらし、ストレスに対して脆弱な脳の状態が形成・維持される。この長期持続性の変化は神経可塑性の一つの現れであり、薬物に応答した遺伝子発現誘導を必要とする。この現象の成立に必須な新規PDZ-PX遺伝子mrt1の解析を中心に上記の話題について紹介する。