【太陽系と原子はそっくり?】
地球は太陽のまわりを公転している。水星、金星、火星などの惑星も、同じように太陽のまわりを公転運動している。その運動を維持している力は、万有引力である。厳密ではないがシンプルなイメージとしては、原子も太陽系とそっくりな構造をしている。中心には重い原子核があり、そのまわりを軽い電子がまわっている。
【ミクロの世界は一味違う】
太陽系と原子の違いの一つは、働く力がクーロン力である、という点である。もう一つの違いは、電子の公転軌道には制約がある、という点である。たとえば、地球を今より太陽から遠ざけたとしても、適当な速度を与えてやれば安定した公転運動を維持する。つまり、惑星の公転半径には制約がなく、どんな値でもとることができる。ところが、電子の公転半径はとびとびの値しか取れない。これは、ミクロの世界を支配する特別なルール(※)による。このことが原因で、電子のもつ力学的エネルギーの値もとびとびになる。結局のところ、そうした電子を含む原子の内部エネルギーがとびとびの値となるのである。
【原子のエネルギーは光の色に表れる】
原子中の電子がエネルギーの高い状態から低い状態にジャンプするとき、光を放つ。その色を観察すると、どの軌道からどの軌道に飛び移ったのかがわかる。そこで、体験教室では、とにもかくにも、原子の放つ光の色を観察しよう。まだまだ理屈を十分に理解できなくてもいい。光の色を観察して、そこから、ミクロの世界の太陽系というロマンを感じとれれば、それで十分だ。
※補足: ミクロの世界を支配する特別なルール
ボーアという人がもっとも単純な原子である水素原子についてモデルを立てた。クーロン力を向心力にして電子が陽子のまわりを周回運動するモデルである。そして、角運動量がとびとびの値しか許されない、というおまじないのような操作をすると、内部エネルギーが整数の2乗に反比例することを示した。これは,驚くほど正確に実験結果と合う。どうやら、ミクロの世界は、角運動量がある定数の整数倍になる、という特別なルールに支配されているようだ。これらのことは高校の物理でも習うが、このような特別なルールを体系的にまとめた「量子力学」を大学で学ぶと、もっと厳密な説明ができるようになるのでお楽しみに。