研究内容

吸収班

吸収冷凍機とは 吸収冷凍機は吸収冷凍サイクルを用いた機器(下図)です.吸収冷凍サイクルは4個の熱交換器(再生器・凝縮器・蒸発器・吸収器)から構成されており冷媒と吸収液の2種類の溶液が入っています.再生器・凝縮器内は高圧,蒸発器・吸収器内は低圧となっています.再生器に排熱(150℃程度)などのエネルギーを投入します.その際,冷媒蒸気と冷媒濃度の薄い弱溶液に分かれます,冷媒は凝縮器に送られ外気温などによって冷却し,冷媒溶液になります.冷媒溶液は圧力差より蒸発器に送られ12℃の冷水によって蒸発します.その際に,12℃の水は冷媒溶液の蒸発潜熱分のエネルギーを奪われ冷えます.この冷えた水は空調などに利用します.蒸発した冷媒は吸収器に送られ,また,再生器から来た弱溶液と混ざります.吸収器内では外気温などで冷却され,凝縮しポンプによって再生器に送られます.吸収冷凍機は以上の原理で稼働します.

イオン液体を用いた吸収冷凍サイクル 従来, 吸収冷凍機の作動媒体である冷媒と吸収剤には,水と臭化リチウム,アンモニアと水が使われてきた.より 低温の熱源を利用できれば,排熱利用の幅を広げ,一層の省エネルギーに役立つ. 本研究では,冷媒と吸収剤に水とイオン液体を用い,LCST(Lower Critical Solution Temperature:下限臨界 供溶温度)挙動を有するイオン液体を利用した新しい吸収冷凍サイクルを提案することを目的とする.LCST 挙動とは,混合物において,ある温度を境に加熱すると分離,冷却すると相溶する挙動である[1].この性質 を持つイオン液体を用いることで冷媒と吸収剤の分離に必要な熱源温度を低下させることができ,これまで より低温の熱源で動作する吸収冷凍機の実現が期待できる.

吸着班

吸着冷凍機 吸着冷凍機は下図に示すように蒸発器,凝縮器,シリカゲルなどの吸着剤を充填した熱交換機から成り,系内は真空となっています.蒸発器で冷媒が蒸発する際に潜熱を奪うことで冷水が得られ,蒸発した冷媒は吸着剤に吸着されます.この過程を吸着過程と呼びます.十分に吸着を行った吸着剤は排熱を利用して加熱され再生されます.この時,脱着された冷媒は凝縮器へと送られ凝縮します.この過程を脱着過程と言います.吸着・脱着過程を繰り返すことで連続的に冷熱を得ることができるのが吸着冷凍機です.単段型吸着冷凍機は,80℃程度の低温排熱で駆動し,9℃程度の冷水を得ることができます.本研究室ではこの吸着冷凍機の性能向上を目指し,吸着剤と熱交換器間の伝熱性能向上に関する研究や,新たなサイクルの提案を行っており,シミュレーション・実験による性能評価等を行っています.

3bed二段型吸着冷凍サイクル 吸着冷凍機は単段型・二段型・三段型となるにつれ低温熱駆動が可能となるがそれと同時に吸着冷凍サイクルに必要な反応器の個数が増え装置が大型になってしまうという課題が存在する.本研究では二段型吸着冷凍機に着目し装置の小型化,更なる低温熱駆動を目的としている. 従来の二段型吸着冷凍機は4つの反応器が必要となる.二段吸着冷凍機から反応器1つ取り除き約20%小型化した3ベッド二段型吸着冷凍機のシミュレーション解析がRahman[5]により行われた.3ベッド二段型吸着冷凍機は装置の小型化を実現しただけでなく従来の二段型吸着冷凍機の駆動温度域(約70℃)での稼働が可能になる.本研究の目的はシミュレーション解析が行われた3ベッド二段型吸着冷凍機の性能評価を実験的に行い吸着冷凍機の低温熱駆動かつ小型化を実現する新吸着冷凍サイクルを提案することにある. また,従来吸着冷凍機に用いられる吸着材はシリカゲルが一般的[6]であったが,本研究ではAQSOA[7]と呼ばれる新吸着材を用いた.

太陽班

我々が持つ豊富な再生可能資源である太陽は地球表面に120,000TWのエネルギーを放射しています.これは地球上の最もエネルギー需要の大きくなる時代が来たとしてもはるかに上回る量です.地球表面の0.16%の面積で10%の効率で太陽光を電気へ変換することで20TWの電力を得ることができ,これは世界の化石燃料使用量の約2倍の電力であります.また,エネルギーとして利用することによるCO2排出量がありません.本研究室ではこの太陽のエネルギーを利用して,環境性を考慮したエネルギー技術に関する研究を行っている.以下に研究内容の例を紹介します.

太陽熱駆動換気システム 農業活動において,収穫した作物を旬から数ヶ月遅い時期に出荷することで市場での取引価格の上昇や,塾生による糖度の上昇が求められています.そのためには収穫後の作物を貯蔵しておく必要があります.作物の貯蔵には,倉庫内の換気が重要となりますが,倉庫が設置されている地域には山間部もあり,そこでは電力の供給網が整備されておらず換気扇の設置が難しくなります.そこで,本研究では太陽熱を利用した換気システムである「太陽熱駆動換気システム」の性能評価を行っています. 太陽熱駆動換気システムでは,換気を行うための煙突である「ソーラーチムニー」が用いられます.太陽熱によってソーラーチムニーの壁面が暖められ,内部の空気に上昇気流が発生します.この上昇気流を駆動源として室内の換気を行います.本研究ではこのソーラーチムニーの設置方位角を,南向きを基準に変化させた場合の性能を数値解析により評価します.

壁面設置におけるガラス管集熱器 太陽熱利用給湯システムの普及は石油危機後一時的に増加したものの,近年では低迷しています.太陽熱利用給湯システムの設置場所であった住宅の屋根が現在では太陽光発電設置場所として利用されていることも普及低迷の原因の一つであると考えられます.しかし,未だに一般家庭における消費エネルギーの約30%が給湯に用いられており,太陽熱利用給湯器を普及させることは省エネルギーの実現へと繋がります. 本研究では太陽熱利用給湯システムを普及させるために,現在ほとんど設置場所として利用されていない壁面への設置を考えました.集熱部である真空ガラス管集熱器を小さくし,ミラーによる集光を行うことで低コスト化を図ります.しかし,壁面への設置のためのミラーの最適な取り付け位置や形状は求められていません.そこで,光学解析ソフトを用いて集熱器への集熱量が最大となる形状を求めていきます.

ミラー集光一軸追尾型太陽光発電 太陽光発電はCO2の排出がなく環境に優しい発電方法として知られていますが,現在は政府の経済支援のもと太陽光発電の導入が進んでいます.しかし,今後一般家庭への自律的な導入を進めるためには,太陽電池の出力向上とそれに伴うコストの低減が必要である.出力向上の手段として,集光することによる日射量の増加と太陽電池の効率の向上があります. 本研究では,太陽高度が低くなり日射量が得にくくなる冬季において太陽電池の出力向上を図り,太陽を南北方向の追尾とミラーによる集光を同時に行う「ミラー集光一軸追尾型太陽光発電」を提案します.本システムの集光性能を光学解析ソフトを用いて評価する.

エリプス班

エリプスとは 東京農工大学小金井キャンパスには,2011年に運用が開始された140周年記念会館がある.本建物には省エネルギー設備が複数導入されている.宮内1)はパッシブ建築技術を含むすべての設備による本建物の年間のエネルギー削減率を18%と推定し,空調設備の運用改善が必要であることを報告した.本建物の設備の運用条件を実際に変更し,効果を検証するには時間がかかる.そこで,本建物をモデル化し,シミュレーションを行うことにより,設備の運用改善の効果を検証することが有効である.

TRNSYS TRNSYSというエネルギー設備の動的シミュレーション,建物の熱負荷計算が可能なツールを用い,本建物をモデル化する.TRNSYSを用い太陽熱回収エネルギー設備の現在の運用状況での不備を解析し,140周年記念会館の最適な運用方法を確立する. 詳細はこちら

システム班

地球温暖化や化石燃料の枯渇が懸念されている近年,これらの問題の対策としてエネルギーの有効活用が求められています.そこで,省エネルギー設備であるコージェネレーションが注目されています.コージェネレーションとは,都市ガス・水素などの燃料から発電するのと同時に,その際に生じる排熱も回収して冷暖房や給湯等に利用するシステムです.そのため,コージェネレーションのエネルギー利用効率は75〜85%であり,排熱が利用されていなかった従来の発電システムの効率(40%)よりも優れています.システム班では,コージェネレーションを建物や地域に導入した場合,エネルギー使用量や燃料費をどの程度削減できるかシミュレーションにより評価を行なっています.様々な省エネルギー機器がもたらす環境的・経済的効果をシステム形成により明らかにします.

面的利用を考慮した業務用SOFC導入効果の解析 コージェネレーションの中でも,固体酸化物形燃料電池(SOFC)はその高い発電効率に注目が集まっています.コージェネレーションは排熱を利用するため,温水など熱を多く用いる建物に導入するとエネルギーを効率よく消費できます.しかしSOFCはもともと発電効率が高いため,従来コージェネレーションが適用されてきた建物よりさらに広い範囲での適応が期待されます.どのような建物にSOFCが導入できるか,経済面・環境面からシミュレーションにより評価を行なっています.